「太陽系には2つの太陽がある」という信じられないほど愚かな陰謀論とは

 太陽系に9番目の惑星があるという主張はかねてから一部で根強く信じられているのだが、それよりもはるかにインパクトのある“陰謀論”が天文学者の口から飛び出している。なんと太陽は2つあるというのだ。

■太陽系に2個目の太陽があった!?

 一説によると太陽の真後ろにもう一つの太陽があるという。太陽系に太陽が2つあるということだが、いったいどういうことなのか。

 重要な天文学的イベントに合わせてオンラインでライブ番組を放送している「Slooh Telescope」チャンネルは2016年に水星が太陽を通過する様子をライブ実況した。

 この時のプレゼンターである天文学者のポール・コックス氏は驚くべき発言をライブで語っていたのだ。

 ライブ映像では左側には太陽と水星の姿があり、右側には太陽と同規模の大きな輝く光が映っていたのだが、これはどう見ても単に機材の構造上の問題で太陽が反射しているだけの光学的な現象であると思われる。

画像は「YouTube」より

 しかしコックス氏はこれが“第2の太陽”であると説明したのだ。

「さて、太陽の右側にあるあの大きな丸いものは何なのかと疑問に思われるかもしれません。それは私たちの第2の太陽です。私たちに第2の太陽があることをあなたが知っていたかどうかはわかりませんが、それはあります」(コックス氏)

 コックス氏の“衝撃発言”はその後も続いた。

「普段は見えないようにしてあります。NASAやその他の組織は、通常、そのようなものを私たちから隠していますが、実際には存在します。それは本当です」(コックス氏)

 なんと天文学者から“第2の太陽”が存在することが語られたのである。

「おそらくこれらのライブショットに現れているのは、神秘的な惑星“ニビル”だと思います。私たちはNASAのように物事を隠蔽しません」(コックス氏)

画像は「YouTube」より

■ジョークだったのか!?

 天文学者のこの発言をどうとらえればよいのか。

 一部の視聴者はコックス氏とチャンネル自体がNASAに対抗するためのブラックジョークを放っただけだと示唆したが、いわゆる“陰謀論”界隈の人々からは格好の“ネタ”として取り上げられたことはいうまでもない。

 ブロガーのジェイコブ・イスラエル氏はYouTubeに投稿した動画の中で「その分野で信頼できる専門家がそのようなことを言うのであれば、それは冗談ではなく、真剣に受け止められるべきです」とコメントしている。

 科学系メディア「IFLScienc」の記事でライターのローラ・シモンズ氏は、もし“第2の太陽”があったとしたら、それはとっくの昔に周知の事実になっているはずだと指摘している。

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「天文学者は何百年にもわたって惑星の軌道を研究し、そのモデルを構築してきました。軌道のわずかな乱れが注目され、重力によって軌道に影響を与えている他の惑星を発見するために使用されてきました。私たちは、太陽系内に恒星ほどの質量を持つ天体を見逃すはずはありません」(シモンズ氏)

 太陽と同じくらいの大きさの“第2の太陽”がもし存在しているなら、隠そうとしても隠しきれないはずだと考えるのは自然だ。

「潮汐により地球に固定されている月とは異なり、太陽は27日ごとに回転します。つまり私たちは1カ月かけて太陽全体を見ることができます。“第2の太陽”は、地球からは決して見えない正確な速度で、実際の太陽を周回する必要があり、そうした場合でも、太陽系に送り出された宇宙船は、それぞれの異なる視点から太陽を見ることができたでしょう。しかし彼らは見ていません」(シモンズ氏)

 仮に地球上からは“第2の太陽”は常に見えない死角にあったとしても、宇宙望遠鏡などからは容易に検知できそうだ。コックス氏の発言はやはりジョークだったのだろうか。もしそうだとしてもあまり笑えそうにはない。

参考:「IFLScience」、「Express」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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