毒蛇に噛まれ、死ぬまでを記録した科学者の最期の記述「午後1時30分…」
毒蛇に噛まれたら、どう対処をすればいいのだろうか。一般的には、噛まれた部位から5~6センチほど心臓に近い部分を縛り、血液の流れを止めて、全身に毒が回るのを防ぐことと、噛まれた部分から毒を吸い出すというのが正解になるのであろう。それと、最も重要なことであるが、いち早く病院や専門機関へ向かい、適切な処置を受けることである。しかし、ある科学者が毒蛇に噛まれた際にとった行動は、おそらく他に例を見ないものなのではないだろうか――。
■噛まれてから死ぬまでを冷静に書き綴る
医学・健康情報メディア「Medical Daily」のレポートによると、アメリカの爬虫両性類学者のカール・パターソン・シュミット博士は、毒蛇に噛まれた後、自分がその毒によって死に至るまでを記録し続けたという。
それは1957年9月25日におこったことである。シカゴにあるフィールド自然史博物館の動物学のチーフキュレーターを務めていたシュミット博士の元に、体長1メートルほどの蛇が分類検査のために届けられた。博士は、ブームスラングと思われるその毒蛇の検査中に誤って左手親指を噛まれてしまった。
爬虫両生類の専門家であったシュミット博士が、毒蛇に噛まれた際の対処方法を知らなかったはずはない。しかし、博士は、病院や対処のための専門機関へ行かずに、そのまま自分の身体に起きる変化を日記に記録し続けたのだ。米科学専門メディア「Science Friday」のビデオシリーズ「The Macroscope」の動画によれば、博士の死に至るまでの驚くべき記録は、次のようである。
・1957年9月25日
アフリカから送られてきた蛇の検査中に、誤って左手親指の付け根を噛まれる。蛇の右の牙が3ミリほど入りこんだ。
・午後4時30分から5時30分
電車で自宅へ帰る途中に強い吐き気がする。しかし吐いてはいない。
・午後5時30分から6時30分
全身に震えと寒気を感じる。38.7度の発熱。口内の粘膜、歯茎からの出血が見られる。
・午後8時30分
トーストを2枚食べる。
・午後9時から12時
よく眠れる。
・午前0時20分
排尿。量は少なく、ほとんどが血液のようである。
・午前4時30分
水をコップに1杯飲むが、強烈な吐き気によって嘔吐する。ほとんど消化されていないトーストを確認する。気分が改善し、6時30分まで眠る。
・9月26日午前6時30分
体温は37度。シリアルとポーチドエッグを乗せたトースト、アップルソース、コーヒーを朝食にとる。尿はでない。口と鼻から出血が続く。
・午後1時30分
昼食後嘔吐する。大量の汗をかく。妻を呼ぶが、答えることも話すこともできなくなる。
博士による記述はここで終わり、その後病院に搬送され、午後3時に死亡が確認された。また、博士は正確な毒による症状が観察できなくなると言う理由で、治療を拒否したことも確認されている。死亡後の解剖では、肺、腎臓、心臓、脳からの出血が見られ、ブームスラングの毒の特徴と一致している。
研究にのめり込み、周りが一切見えなくなった科学者の話を耳にすることも少なくない。命を懸けて研究に没頭する科学者も多くいるだろう。しかし、シュミット博士の例は、実際に自分の研究に命を捧げたというか、研究に命を奪われたきわめて数少ない例なのかもしれない。
(文=高夏五道)
参考:「Medical Daily」ほか
※当記事は2015年の記事を再編集して掲載しています。
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