子供に操縦桿を握らせて墜落し75人が死亡…“アエロフロート航空593便墜落事故”では何が起きたのか

2024.12.21 16:00 編集部

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子供に操縦桿を握らせて墜落し75人が死亡…“アエロフロート航空593便墜落事故”では何が起きたのかの画像1 — 画像は「YouTube」より

　1994年3月23日、モスクワ発香港行きの定期国際便で起きた航空史上最も衝撃的な事故の一つが、アエロフロート航空593便墜落事故だ。機長が子供たちに操縦体験をさせようとしたことがきっかけで、75人もの尊い命が奪われた。この事故は一体どのようなものだったのだろうか。

コックピットでの操縦体験：操縦桿操作と自動操縦の解除

　事故を起こしたのはアエロフロート593便。ヤロスラフ・ウラジミロヴィチ・クドリンスキー機長、アンドレイ・ヴィクトロヴィチ・ダニロフ機長、イーゴリ・ヴァシリエヴィチ・ピスカリョフ副操縦士が操縦を担当していた。クドリンスキー機長にとっては、13歳の娘ヤナと15歳の息子エルダールが初めて海外旅行をするという、特別な意味を持つフライトだった。

子供に操縦桿を握らせて墜落し75人が死亡…“アエロフロート航空593便墜落事故”では何が起きたのかの画像2 — 事故の1年前にシャルル・ド・ゴール国際空港で撮影された事故機　Michel Gilliand – http://www.airliners.net/photo/Aeroflot/Airbus-A310-304/1625053/L/, GFDL 1.2, リンクによる

　午前0時43分頃、クドリンスキー機長は子供たちをコックピットに招待するという致命的な決断を下した。

　乗務員たちは自動操縦が作動しているため安全だと判断し、まずヤナを機長の席に座らせた。

　午前0時51分、エルダールの番になった。エルダールが操縦桿を30秒以上操作したことで状況は急変する。約10キロの力を加えた彼の操作は、自動操縦のプログラムを妨害し、システムは手動制御モードに切り替わった。警告灯が点灯したが、ソ連製以外の航空機に不慣れだった乗務員たちは、異常に気づかなかったのだ。

機体の傾斜と墜落：制御不能に陥った航空機

　機体が傾き始めると、翼の位置の関係で自動操縦は高度を維持できなくなった。クドリンスキー機長は事態の深刻さを悟り、息子に「エルダール、そこから離れろ！後ろへ下がれ、エルダール！危険なことが分かっているだろう？出ろ、エルダール！出ろ、出て行けと言っているんだ！」と叫んでいる。このコックピットの音声は、ボイスレコーダーに収められており、事故当時の緊迫した状況を物語っている。

　操縦士たちは機体の制御を取り戻そうと試みたが、過剰な修正操作により、機体はほぼ垂直に上昇し、失速、そして螺旋降下に陥った。山岳地帯の上空で急速に高度を失った593便は、午前0時58分、制御不能になってからわずか2分後、ロシア南部ケメロヴォ州のクズネツク・アラタウ山脈に墜落した。墜落時の垂直速度は時速約257キロと推定され、生存者はいなかった。

事故原因と教訓：基本ルール順守の重要性

　アエロフロートは当初、操縦士の責任を否定しようとしたが、コックピットの音声記録の公開により、事故原因が人為的ミスであることが確認された。乗務員は豊富な経験を持っていたが、それでも基本的な飛行ルール違反が、75人もの命を奪う大惨事を招いてしまったのだ。今回の事故は、安全運航における基本ルール順守の重要性を改めて示すものとなった。

　子供たちに操縦桿を握らせるという、クドリンスキー機長の行為は、愛情表現だったのかもしれない。しかし、その行為が多くの命を奪う結果となってしまったことは、痛ましい限りである。安全管理の徹底とプロ意識の向上は、航空業界だけでなく、あらゆる分野で必要とされていると言えるだろう。

参考：Wikipedia、ほか