中国で流行中の「HMPV」とは?懸念される感染拡大の実態

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 中国でHMPVの感染拡大が報告され、懸念が高まっている。約5年前に発生した新型コロナウイルスの流行を思い起こさせる出来事だが、HMPVは我々にとってどれほどの脅威なのだろうか。

HMPVとは? 特徴と症状

 HMPVはヒトメタニューモウイルス(Human Metapneumovirus)の略称で、RNAウイルスの一種である。現在、有効なワクチンはないものの、複数の研究チームがワクチンの開発を進めており、HMPVと近縁のRSウイルス(RSV)の混合ワクチンも開発中だという。

 HMPVは、発熱、咳、鼻水、鼻詰まり、喉の痛み、頭痛など、風邪やインフルエンザに似た呼吸器症状を引き起こす。ほとんどの人は比較的軽い症状で済むが、重症の細気管支炎や肺炎を引き起こす場合もある。

 HMPVは2001年、オランダの28人の幼児から初めて検出された。その後の研究で、オランダのほぼすべての子供が5歳までにHMPVに感染した経験があり、少なくとも50年前からヒトの間で流行していたことが明らかになった。

 重要なのは、HMPVは、突然変異で発生した新しいウイルスではないという点だ。これは、5年前に初めてヒトへの感染が確認された新型コロナウイルスとは大きく異なる。HMPVは世界中で子どもがかかるありふれた「風邪」の原因ウイルスの一つである。しかし、下気道感染症による入院の約10%は、HMPVが原因だと推定されている。

中国におけるHMPV流行:懸念される感染拡大の実態

 HMPVはありふれたウイルスであるにもかかわらず、なぜ今、ニュースで話題になっているのだろうか。

 ニューズウィークによると、中国疾病予防管理センターは、中国でインフルエンザに似た複数の病気の感染者が増加しており、特にHMPVの増加が目立つと報告している。流行の規模に関する統計はまだ不明だが、入手できたデータによると、HMPVは中国の子供たちの間で2番目に多い呼吸器感染症の原因となっているという。インフルエンザに次いで2番目だが、新型コロナウイルスやライノウイルス、アデノウイルスよりも上位である。

 オーストラリア国立大学の感染症専門医、サンジャヤ・セナナイェーク准教授は、「中国では現在、HMPVの大規模な流行が発生している。これは中国の医療システムにとって優先事項だが、新たな世界的流行発生の切迫した懸念材料ではない」と声明で述べた。

「多くの呼吸器系ウイルスと同様に、感染のピークは季節によって異なるものの、一般的には晩冬から早春にかけて流行する。中国では深刻なHMPV流行の時期を迎えていると考えられ、ウイルスと人々の行動の複合的な要因が重なっている可能性があるものの、いずれは落ち着くだろう」と説明している。

 中国におけるHMPV感染者数は多いものの、例年この時期にピークを迎える。症例数の増加は、疾病監視体制の向上も一因と考えられる。中国は新型コロナウイルス感染症の発生をきっかけに、呼吸器系疾患の監視を強化しており、以前は見過ごされていた症例が発見されている可能性がある。

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情報公開と情報共有の重要性:国際的な協力体制の構築へ

 疫学の専門家たちは、中国をはじめとする各国が、感染状況に関する情報を透明性のある形で公開し、世界的な対応を可能にすることの重要性を強調している。セナナイェーク准教授は、「中国が感染拡大に関するデータ、特に感染者の属性に関する疫学データなどをタイムリーに共有することが不可欠だ。また、HMPVが原因であること、そして懸念すべき変異がないことを確認するために、ゲノムデータも必要になる」と指摘している。

 HMPVは新しい脅威ではなく、長年知られてきたウイルスである。しかし、その感染が広がるにつれ、国際社会が注視する必要がある。HMPV感染症の増加が一時的な現象にとどまるのか、それともさらなる影響を及ぼすのか、今後の調査と研究が鍵となるだろう。

 HMPVが我々の生活に与える影響は未知数だが、新型コロナウイルスの経験を教訓に、国際的な協力がさらなる拡大の防止につながることを期待したい。

参考:IFLScience、ほか

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文=深森慎太郎

人体の神秘や宇宙の謎が好きなライター。未知の領域に踏み込むことで、日常の枠を超えた視点を提供することを目指す。

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