謎の致死性疾患「Disease X(疾病X)」原因不明のアウトブレイクに懸念=コンゴ

fernando zhiminaicelaによるPixabayからの画像

 コンゴ民主共和国(DRC)南西部で発生した「謎の病気=Disease X(疾病X)」によって、2週間で67人から143人が死亡したと報告されている。この病気は、発熱、頭痛、咳、貧血といったインフルエンザに似た症状を引き起こすという。一体何が起きているのだろうか?

原因不明のアウトブレイク:感染拡大の実態把握が困難に

 コンゴで発生した謎の感染症は、女性と子供を中心に深刻な被害をもたらしている。しかし、現時点ではこの病気について詳しいことはほとんど分かっていない。

 当初は、マラリア、デング熱、チクングニア熱など、この地域で流行している既知の病気が疑われた。保健当局は原因究明を急いでいるが、検査体制の不備やサンプル輸送の遅れなど、医療基盤の脆弱さが原因究明を難航させている。一般的な病原体検査しかできない検査機関が多いこと、稀な病原体の検出には海外の専門機関への送付が必要となること、生物学的サンプルの国際共有に関する議論などが課題となっている。

 アウトブレイクの規模と深刻度を把握することも重要だが、感染者のすべてが医療機関を受診するわけではないこと、医療機関の不足や人員不足、検査や報告体制の不備などから、実態把握は容易ではない。コンゴの医師数は、人口1万人あたり2人未満と、日本の24人(2019年)と比べて極めて少ない。

 原因や感染者数に関する情報不足は、脅威の正確な評価を困難にしている。しかし、これは世界的な問題でもある。気候変動や人口動態の変化、都市化、森林破壊などにより、動物由来感染症の発生は増加傾向にある。世界の感染症監視体制は断片化しており、特に貧困国では未検出や発見の遅れが深刻だ。監視体制の資源不足、人員不足、訓練不足、報告の非標準化なども問題となっている。感染から診断、そして保健当局への報告までの遅延も、対策を遅らせる要因となっている。

 WHOは、感染症発生の早期発見・対応を目指し、7-1-7イニシアチブ(7日以内の検出、1日以内の通知、7日以内の初期対応完了)を推進している。しかし、感染拡大のスピードによっては対応が遅れる可能性もある。統合型疾病監視対応(IDSR)のような既存の監視活動の統合・調整も重要だが、情報技術システムの問題、財政難、データ共有の問題、人員不足などが課題となっている。

 国際病原体監視ネットワークや、複数機関・部門による共同監視などの取り組みも進められているが、その有効性は未知数だ。世界的な感染症監視体制の改善なくして、次のパンデミックの早期発見は難しいだろう。

 新型コロナが忘れ去られそうになった今、世界規模での感染症対策の重要性が、改めて問われているのかもしれない。

参考:ScienceAlert

TOCANA編集部

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