IQ低下が国家崩壊を加速か? “鉛汚染”が帝国の衰退をもたらした可能性
ローマ帝国が滅亡した原因はいくつかの有力な説があるのだが、新たな研究は重要なヒントを提供しているのかもしれない。滅亡直前のローマ市民のIQが急激に低下していたというのだ――。
■大気中の高い鉛濃度でローマ人のIQが急激に低下
ローマ帝国は歴史上最も技術的に進んだ帝国の一つであったが、新たな研究によるとローマ人は汚染による認知機能の低下と闘っていた可能性があるという。鉱山採掘による広範囲にわたる鉛汚染が当時のヨーロッパ全土の人口のIQ(知能指数)を低下させていたことが示唆されているのだ。
北極や南極で掘削される氷床コア(ice core)は、地球の気候・環境変動の記録を保存している貴重な資料なのだが、氷床に閉じ込められた気泡は過去の時代の大気の様相を示しており、鉛などの汚染物質の存在は産業活動の指標となる。
米ネバダ州の研究機関「Desert Research Institute」をはじめとする研究チームが「 National Academy of Sciences(PNAS)」で発表した研究では、北極の氷床コアで測定されたローマ時代の鉛汚染の詳細な記録と大気モデリングを使用して、この時代の産業活動による鉛の排出がヨーロッパ全土の大気中の鉛の濃度を上昇させていたことを突き止めた。
北極をはじめとする3つの氷床コアの分析により、ヨーロッパの鉛排出量はローマ帝国の台頭後、紀元前15年頃に急増しており、ローマ帝国が衰退し始めるまで約150年間、高水準を維持していたのだ。
研究チームは鉛への曝露と認知機能低下を関連付ける最新の研究結果とこの調査結果を組み合わせ、この時期の鉛汚染により、小児の血中の鉛の濃度が平均して1デシリットルあたり約2.5マイクログラム増加したと推定した。
その結果、ローマ帝国全土でIQが2~3ポイント低下する認知能力の低下が広まったと考えられるということだ。
古代の鉛汚染は主に銀採掘に起因しており、鉛を多く含む方鉛鉱(ほうえんこう)を溶かして銀を抽出しており、この鉛の多くはその後、大気中に放出された。
成人の場合、高レベルの鉛への曝露は、不妊、貧血、記憶喪失、心血管疾患、がん、免疫反応の低下と関連している一方、子供の場合、低レベルの曝露でも IQの低下、集中力の低下、学業成績の低下と関連している。
IQの2~3ポイントの低下は個人レベルではたいした問題にはならないが、それがヨーロッパ全土の人口に当てはまるとすればかなり大きな社会的な問題になり得る。
鉛による健康被害が帝国の弱体化の大きな原因と考えられるが、そこにローマ市民のIQが低下が加わっていたとすれば確かに国家を揺るがす事態に発展してもおかしくない。現代の生活では普通に暮らしている限りは鉛を体内に取り込むことはないと思うが、気をつけるに越したことはないだろう。
参考:「Daily Mail」ほか
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2024.10.02 20:00心霊IQ低下が国家崩壊を加速か? “鉛汚染”が帝国の衰退をもたらした可能性のページです。IQ、ローマ帝国、知能指数、鉛中毒などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで