生後9カ月の男児に行われた“非倫理的実験”「リトル・アルバート実験」で赤ちゃんに何が起こったのか

いかに重要な科学的研究であるにせよ今日では動物実験においてすら厳格な倫理的ガイドラインが設けられているが、かつて行われた「史上最も非倫理的な心理学実験」では生後9カ月の赤ちゃんが実験台にされていた――。
■生後9カ月の男児に行われた非倫理的実験
エサを与える時に毎回必ずベルを鳴らすことで、「パブロフの犬」はベルの音を聴いただけで唾液を分泌するように条件づけられたという有名な実験があるが、なんとそれを人間の赤ちゃんに対して行っていた「史上最も非倫理的な心理学実験」があった。
「リトル・アルバート実験」として知られるこの実験では、心理学者のジョン・B・ワトソンが1919年にネズミなどを使って恐怖を演出することで、人間における古典的条件づけの証拠を見つけようとした。
このきわめて非倫理的で非人道的な実験で、“アルバート”という名前のこの赤ちゃんに何が起こったのか。
ワトソンと大学院生の助手が行ったこの実験では、ウサギ、サル、白いネズミ、燃える新聞紙など、赤ちゃん(アルバート)をさまざまな刺激にさらしてその反応を測定した。
赤ちゃんはこれらのものを初めて見たので、それらを目の当たりにしても特に恐怖心は示さなかった。
それでは面白くなかったのかその後ワトソンはやり方を変えた。赤ちゃんの前にネズミを置いたとき、ワトソンは金属パイプをハンマーで叩いて大きな音を立て、赤ちゃんを泣かせたのだ。
ワトソンはこれを繰り返し、ついにはネズミが現れただけで“アルバート”は泣き出すほどになった。かなり強引な手法ではあるが、人間の赤ちゃんでも古典的な条件づけは形成され得るということになる。
しかし実験が終了してからも一部の研究者たちはその後の“アルバート”に何が起こったのかを追跡してきた。

ノースカロライナ州にあるアパラチア州立大学のホール・ベック氏の調査では、“アルバート”は実験が行われたメリーランド州ボルチモアのジョンズ・ホプキンス大学病院で働いていた女性の息子だったという。
ベック氏は何年も調査し、最終的には顔の分析を行った結果、2009年に、幼い“アルバート”は病院職員のアルヴィラ氏の息子で、同じ日に生まれたダグラス・メリット氏に違いないと結論づけた。
そのダグラスは6歳のときに水頭症で亡くなっていたことが判明し、この実験の後遺症のせいであったのではないかとの疑惑が浮上した。もし本当にそうだとすれば大問題に発展することは間違いない。
しかしベック氏の調査結果に納得しなかった心理学者もいた。
カナダのマキュアン大学のラス・パウエル氏とその同僚らが再調査したところ、ベック氏が別の有力な候補を見逃していたことが判明した。
パール・バーガーという女性もその時期に同じ病院で赤ちゃんを出産していたことが判明し、その赤ちゃんは“アルバート”と同じ日に生まれていただけでなく、本名がウィリアム・アルバート・バーガーであった。
そして、このアルバート・バーガーの生涯はははるかに幸せなもので、姪によると彼は2007年に亡くなるまで長く幸せな人生を送ったということだ。だが興味深いことに、このアルバート・バーガーは生涯を通じて動物を嫌悪していたのだった……。
参考:「LADbible」ほか
※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。
関連記事
人気連載
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...
2024.10.02 20:00心霊生後9カ月の男児に行われた“非倫理的実験”「リトル・アルバート実験」で赤ちゃんに何が起こったのかのページです。実験、倫理、パブロフの犬などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで