北朝鮮の知られざる現実・・・TVを買うだけで政府の監視が入りチャンネルを削除

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画像は「YouTube」より

 今さら言うまでもないが、北朝鮮は世界でも最も閉鎖的な国家の一つとして知られている。その実態は外部からうかがい知ることが難しく、内部の情報は限られたものしか出てこない。しかし、同国から脱出した人々の証言を通じて、その異質な社会の一端が明らかになってきている。

 北朝鮮出身の脱北者、ティモシー・チョ氏は、現地での生活について衝撃的なエピソードを語っている。特に一般の人々がテレビを購入する際の政府の監視体制は、他国では考えられないほど厳格だという。

テレビ購入すら自由ではない北朝鮮の現実

 北朝鮮では一般市民がテレビを購入する際、必ず政府の監視が入る。購入後、国の担当者が自宅を訪問し、すべてのチャンネルを削除。最終的に残るのは政府が許可した唯一のチャンネルのみである。

 このチャンネルでは金一族を称える番組が24時間放送されている。歴代の指導者である金日成(キム・イルソン)、金正日(キム・ジョンイル)、そして現指導者の金正恩(キム・ジョンウン)を賛美するドキュメンタリー、歌、演説が流れ続ける。さらに、一般のポップミュージックですら、金一族を称える歌詞が含まれていなければ放送されないという徹底ぶりだ。

「崇拝」は国家の義務──神格化される指導者

 北朝鮮における金一族のカリスマ性は、単なる政治的支配を超えたものになっている。指導者は「神」に等しい存在として国民に教え込まれており、子供の頃からこの思想を叩き込まれる。

 例えば、北朝鮮の建国者である金日成は、亡くなった後も「永遠の指導者」とされ、国のトップとしての地位はそのまま。息子である金正日は、「奇跡的な誕生」をしたとされ、彼が生まれた際には巨大な星が輝き、ツルが空を舞ったという神話のような物語が学校で教えられている。

 こうした「神話」は、学校教育や国営メディア、職場での講習などを通じて、徹底的に国民に浸透させられる。さらには、毎年の国の祝日には、国民が金一族の銅像や記念碑を訪れ、礼拝のような儀式を行うことが義務づけられている。これに参加しないと政府から「忠誠心が足りない」とみなされ、自分だけでなく家族全体が監視対象となる可能性もあるのだ。

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画像はUnsplashThomas Evansより

涙すら強制される──支配される感情

 この厳格な体制の中では、個人の感情すら政府のコントロール下に置かれている。ティモシー・チョ氏は、1994年に金日成が死去した際、国民全員が「心からの涙」を流していたと振り返る。しかし、それは純粋な悲しみではなく、「泣かなければいけない」というプレッシャーのもとでの行動だったという。

 彼自身、食事を取る気になれず、何日も断食してしまったが、今ではそれが「洗脳されていた結果」だったと語る。北朝鮮では、指導者の死を嘆かないことは国家への反逆とみなされる可能性があるのだ。

外部の世界を知らずに育つ子供たち

 北朝鮮の教育制度もまた、外部の世界を徹底的に遮断するように作られている。「世界で最も豊かな国は北朝鮮であり、外国は危険で貧しい」と教えられ、アメリカや韓国は敵国として描かれる。

 教科書や絵本には、北朝鮮の指導者がいかに素晴らしいかを示す物語が溢れており、外国の文化や歴史についての教育はほとんど行われない。また、外国映画や音楽は厳しく規制され、違法視聴が発覚すれば処罰される。インターネットの利用も極めて限定されており、アクセスできるのはごく一部のエリート層に限られている。

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画像はUnsplashThomas Evansより

自由を求めて──命がけの脱出

 このような監視社会から逃れるため、多くの国民が命をかけて脱出を試みている。しかし、その道は決して簡単ではない。国境には監視塔が設置され、逃亡者は発見され次第射殺される危険がある。さらに、脱出に成功しても残された家族が厳しい報復を受ける可能性が高い。

 脱北後も新しい環境に適応するのは容易ではない。北朝鮮で育った人々は、外部の世界についてほとんど知らずに生きてきたため、外国での生活に馴染むまでには長い時間がかかる。韓国に渡った脱北者の中には、自由な社会での選択肢の多さに戸惑い、精神的なストレスを抱える人も少なくないという。

未だ謎に包まれる北朝鮮の実態

 北朝鮮の体制は、世界でも類を見ないほど徹底した情報統制と思想教育によって維持されている。テレビを買うという他国では当たり前の行為ですら政府の監視下にある。人々の行動だけでなく感情までもが国家によって管理される社会。それが現代においても続いている北朝鮮の現実だ。

 外部からは謎に包まれたままのこの国。しかし、脱北者の証言を通じて、少しずつその内部の実態が明らかになりつつある。北朝鮮の未来はどうなるのか。そして、閉ざされたこの国の人々が、いつか本当の自由を手にする日は来るのだろうか。

参考:Misterios do Mundo、ほか

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