オランダの最高指導者が「暴徒に切り刻まれて喰われた」集団カニバリズム事件！世界史の深すぎる闇

2022.06.25 08:00

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画像は、「Ancient Origins」より

　現代でも世界各地で人間が人間を食らうカニバリズム事件がしばしば発生している。カニバリズムの多くは精神異常や異常性癖、呪術に起因するが、暴動の際に暴徒たちが犠牲者の死体を食らうこともある。このように熱狂した民衆がタブーを犯す惨劇は世界史でも散見される。

　17世紀にオランダ共和国（ネーデルラント連邦共和国）で活躍したヨハン・デ・ウィットは、「オランダ黄金時代」を牽引した政治指導者だったが、失脚後は民衆に虐殺されてその死体を食われてしまった。

　デ・ウィットは1625年9月24日にドルトレヒトの名門に生まれた。父のヤコブ・デ・ウィットはドルドレヒト市長であり、その息子はどのような道に進んだとしても成功する可能性が高いと期待されていた。彼はライデン大学で数学と法律学を学び、解析幾何学のテキストの1冊執筆するなど、若くして輝かしい業績を残した。

　父と同じ道を歩んだデ・ウィットは、オランダで総督の地位を独占していたオラニエ＝ナッサウ家と対立。共和党の商人階級とともに、長年続いていた君主主義の支持者に戦いを挑んだのだ。

　その後、デ・ウィットが権力を握った時期は、イングランドとオランダの海軍が武力衝突を繰り返す第一次英蘭戦争の最中だった。当時のオランダは世界貿易の中心地アムステルダムを有し、ヨーロッパで最も影響力のある大国の1つだった。アジアの商業ルートもオランダ東インド会社によって管理されていた。

　デ・ウィットは巧みな外交手腕でイングランドとの和平交渉に乗り出した。また、イングランドとフランスを互いに争わせる工作にも成功した。一方、オラニエ公による君主制に激しく抵抗し続け、オラニエ＝ナッサウ家がオランダで政治的な支配権を獲得するのを阻止しようとした。第一次英蘭戦争の講和条約であるウェストミンスター条約には、オラニエ＝ナッサウ家から総督を選出しないという排除条項が盛り込まれていた。そのため、デ・ウィットは同条約の批准を推進した。

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画像は、「Ancient Origins」より

　1667年5月、フランス王ルイ14世がスペイン領ネーデルラントの継承権を主張し、ネーデルラント継承戦争が勃発した。同年7月、オランダは第二次英蘭戦争を終結させ、指導者のデ・ウィットはイングランド公使ウィリアム・テンプルと協力してイングランド・オランダ・スウェーデンで三国同盟を締結。デ・ウィットの策略によってフランスはスペイン領ネーデルラントの領有に失敗した。

　しかしその後、フランスのルイ14世はオランダを敵視するようになり、オランダを孤立させる外交を展開した。1670年にイングランド王チャールズ2世とドーヴァーの密約を結び、1672年にスウェーデンと仏瑞同盟を締結し、三国同盟を崩壊させたのだ。

　世界で最も優れた海運国の利益を享受していたデ・ウィットだが、次第に包囲網が狭まり、さらに対外戦争が激しさを増した1972年に悲劇的な最期を迎えることとなった。

　1972年3月にイングランドが、4月にフランスも相次いでオランダに宣戦し、海と陸の両方からオランダに攻め入った。デ・ウィットは海軍の増強に努める一方、陸軍を軽視していた。そのため、敵国が陸路から容易に侵入し、オランダ国民に多大なる犠牲者が出た。

　デ・ウィットは、軍事政策で批判されただけでなく、周囲からの反対が多かった親仏外交政策を行なったことで、支持者の離脱と国民の不満に直面。8月にはクーデターで辞任を余儀なくされ、民衆に担がれたオラニエ公ウィレム3世に政権の座（当時のオランダにおける事実上の最高指導者であるホラント州法律顧問の地位）を奪われることとなった。