霊の憑依か、世界線の歪みか… 渋谷で先輩が“別人”になった夜

2025.06.15 20:00 文＝オカルトめがね

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　当たり前だった日常に、突然“ズレ”が生じたら、あなたはどうするだろうか？

　今回寄稿いただいたのは、ある女性が体験した、まさにそんな出来事に関する体験談だ。17歳の頃、東京・渋谷で過ごした青春の一幕で、彼女は思いもよらぬ出来事に遭遇することとなった。

　この体験が示すものは一体何か。もしかしたら、この世には“世界線のズレ”があるのかもしれない――。（編集部）

イメージ画像　Created with AI image generation (OpenAI)

　17歳の頃、東京の渋谷という街で遊んでいた時期がありました。

　日に日に新しい友人も増えていき、だんだんと家に帰るのが面倒になり、気付けば友人の家を転々としていました。

　そこで知り合った、気の合う女の子たちと5人ほどのグループを作りました。

　やがて私たちは少し年上の男性5人グループとも親しくなり、一緒に遊ぶようになりました。彼らの中心には、面白くて仲間思いのリーダー、T先輩が居て、特に私を妹のようにすごく可愛がってくれていました。全く恋仲ではありませんでしたが、お互いに信頼し合っている特別な関係で、私とは一番の仲良しでした。

　ところが、ある時を境に男性グループの全員と連絡が取れなくなってしまいました。携帯電話にかけても繋がらず、まるで蒸発してしまったかのようでした。理由もわからないまま2ヶ月近くが過ぎていきました。

　そんなある日、男性グループの一人から電話がかかってきました。話を聞くと、心霊スポットに行った帰り道に、T先輩が何もないところでバイクを横転させて怪我をしてしまい、運悪くたまたま通りかかった警察に捕まってしまったとのことでした。詳しい罪状は教えてくれませんでしたが、色々と悪いことをしていたらしく、それがバレてしまったようです。

　ようやく自由の身になったので、久しぶりにみんなで集まろうということになりました。

　2日後の深夜、指定されたファミレスに到着すると、T先輩以外のメンバーは既に揃っていましたが、見知らぬ男性が一人混じっていました。私は偶然にもその知らない男性の前に座る事になりました。

　すると、その男性が私の名前を呼び捨てにしながら、まるで昔からの知り合いのように馴れ馴れしく話しかけてきました。誰だろうと戸惑いながら、T先輩と一番仲が良かった男の先輩に「T先輩はいつ来るのかな？」と尋ねました。

　その先輩は不思議そうな顔をして「何言ってんの？目の前にいるじゃん」と答えました。

　その瞬間、場の空気が変わったことに気がつきました。目の前にいるのはT先輩ではありません。背格好も顔立ちも、性格や声までもがまったくの別人でした。

　周りの友人たちは皆、その男性をT先輩と呼び、とても演技とは思えないほど普通で、ドッキリや冗談ではない様子でした。不思議と、この事を口にしたらいけない気がして、少しの間やり過ごしていましたが、時間が過ぎてもこの状況が理解できず、恐怖を感じた私は先に帰ることにしました。

　ファミレスを出ようとすると、T先輩と呼ばれているその男性が追いかけてきて、こう言いました。

「気づいちゃった？」

　その一言で背筋が凍りつき、私は逃げるようにその場を去りました。震える手で携帯電話を操作し、男性グループだけでなく、一緒にいた女の子たちの連絡先も全て削除しました。あの場にいた全員が、まるで何事もないように「偽のT先輩」を受け入れていたのです。もう誰も信じることができませんでした。その時、もう二度と彼らとは関わらないことを決めました。

　後日、この話を怪談好きの知人に相談したところ、「心霊スポットでT先輩が怪我をした時、そこにいた霊がT先輩に憑依して、あなたにはその霊の本当の姿が見えていたのではないか」という解釈を聞かせてくれました。

　しかし、私自身は別の可能性を考えています。あの時、何かのきっかけで別の世界線に飛んでしまい、そこでは最初からあの男性がT先輩だったのではないか、と。そして、T先輩と呼ばれている男性も、私がその事実に気づいたことを理解していたのかもしれません。

　真相は今でもわかりません。ただ、あの時の恐怖と混乱は今でも鮮明に覚えています。

文：オカルトめがね

　この体験談の最も恐ろしい点は、T先輩を名乗る男が「気づいちゃった？」と尋ねたことだろう。彼は、自分が偽物であること、そして世界が歪んでいることを自覚していた。そのうえで、今も彼女以外の全員を騙し続けているのかもしれない。

　あなたの隣の世界は、果たして昨日と同じだろうか。（編集部）