5000年前の粘土板に“ブロックチェーンの原型”があった?古代メソポタミアの驚くべき記録術

「ブロックチェーン」と聞けば、誰もが最新のデジタル技術を思い浮かべるだろう。しかし、その基本となる「改ざんできない記録」という仕組みは、実は5000年以上も昔、古代メソポタミアの粘土板にその原型をみることができる。現代のテクノロジーが、いかに人類の古い知恵と繋がっているか、その驚くべき接点を紹介したい。
考古学的な証拠は、紀元前3400年頃のメソポタミアの書記たちが、すでに分散型の検証ネットワークと洗練された認証の仕組みを備えた「改ざん不可能な記録システム」を開発していたことを示している。それは広大な帝国の複雑な経済を管理する、包括的なシステムだったのだ。
燃える粘土板:元祖・改ざん不可能な台帳
古代の粘土板は単なる筆記用具ではなかった。永続性を保つために意図的に設計されていたのである。メソポタミアの書記たちは、重要な記録が記された粘土板を窯で焼き固め、「永遠の記録」と呼んだ。一度焼かれた粘土板は、事実上破壊不可能となる。
改ざん防止の仕組みも巧妙だった。彼らは「ブッラ」と呼ばれる粘土の封筒を使い、重要書類を粘土で包んで封印した。この封印を壊さなければ中身は確認できず、不正な改ざんがあれば一目瞭然というわけだ。これは記録の変更を即座に検知できる、現代のブロックチェーンにおける暗号技術の原型ともいえるだろう。
彼らが取り組んでいたのは、まさに現代と同じ「信頼」の問題そのものだった。「どうすれば改ざんできない記録を作れるか?」「単一の権威に頼らずに取引を検証するには?」—こうした問いが、当時も今も、技術革新を駆動しているのである。


書記たちのネットワーク:古代の分散型システム
ここからが、彼らのシステムが本当に賢いところだ。メソポタミアの記録管理は中央集権的ではなく、各地で働く専門の書記たちのネットワークによって分散管理されていた。
このネットワークは、現代でいう「合意形成」の原則で動いていた。商取引には複数の証人が必要で、その内容は「粘土に記録され、証人が立ち会う」ことが定められていた。記録のコピーは異なる書記によって複数の場所に保管されていたため、誰か一人が重要な記録をこっそり書き換えることは不可能だったのである。
円筒印章と指紋:驚くほどモダンな認証技術
古代の会計技術は、認証の分野でその洗練の極みに達する。紀元前4400年頃にまで遡る「円筒印章」は、世界初の個人認証デバイスとして機能した。粘土板の上で転がすと、それぞれの印章に固有の模様が刻まれ、偽造不可能な署名となったのだ。
驚くべきことに、彼らは現代でいう「多要素認証」すらも導入していた。
・持っているもの:円筒印章そのもの
・知っていること:印章のデザインの意味を理解できる知識
・物理的な認証:複数の証人の立ち会いや、粘土板に押された指紋
この多層的なアプローチは、強力なセキュリティを生み出した。驚くほど現代的な本人確認のアプローチである。

楔形文字から暗号通貨へ:変わらぬ人類の挑戦
この古代の知恵は、ブロックチェーン技術が人類の歴史において、決して急進的な変化ではないことを教えてくれる。それは、信頼できる記録を作ろうとする我々の終わりなき探求における最新のエピソードに過ぎないのだ。
私たちが分散型台帳で解決しようとしている問題(信頼できる中央機関なしで、いかにして永続的で検証可能な記録を生み出すか)は、古代社会が経験した問題と全く同じなのである。メソポタミア人は焼き固めた粘土と書記のネットワークで、私たちは暗号技術とP2Pネットワークでその課題に適応している。技術は変われど、挑戦は時代を超えて普遍なのだ。
ブロックチェーンの根底にある原則は、最初のコンピューターコードが一行も書かれるより何千年も前に、すでに試され、検証されていたのである。
参考:Ancient Origins、ほか
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