「ウランは安全だ」テレビカメラの前で放射性物質を食べ、原子炉で泳いだ核化学者の“狂気”と、その謎の死

画像は「YouTube」より

 人体に深刻な悪影響を及ぼす放射性物質だが、驚くべきことにある核化学者は無害であることを証明するために、テレビカメラの前でウランを食べた――。

■テレビカメラの前でウランを食べた核化学者

 ガレン・ウィンザー(1926-2008)は、アメリカの原子力時代を切り拓いた核化学者の1人である。

 ウィンザーがこのテーマに興味を持ったのは、ワシントンのハンフォード原子力施設でプルトニウムの抽出作業を開始した1950年代にまでさかのぼる。

 彼は核燃料の在庫と貯蔵の測定と管理を担当し、その後はアメリカ中を旅して人々と話をしたり、ラジオで話したり、核放射線をめぐる“誤解”を議論するビデオを多数制作している。

 1985年、ウィンザーは自らの主張を証明するために、さらに一歩踏み込んだ行動に出た。ウィンザーは保守派政治団体「ジョン・バーチ・ソサエティ」の活動でアメリカ北西部を巡回し、原子力産業界の過剰規制についての論説を各地で披瀝したのだ。

 テレビで生放送された講演では、ウィンザーはスタジオに放射性物質であるウランが入った瓶を持ち込んで話を始めた。

「ワシントン州はウランのサンプルを押収するために、ゲシュタポの工作員2人を私の家に送り込んだ」と彼は話す。

 その後、驚くべきことに、ウィンザーはテレビカメラの前でウランを手のひらに乗せ口に放り込んで食べたのだ。

「私が今やったことは、私を高レベル核廃棄物にした」と彼はガイガーカウンターで自分の舌の放射線測定を終えた直後に言った。

イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)

「連邦規制によると、ニューメキシコ州カールスバッドの3000フィートの深さに私を埋めなければならない」と彼は冗談交じりに語っている。

 ウィンザーはウラン酸化物を摂取してから約20年後の2008年、82歳で亡くなった。死亡記事では死因は明らかにされていない。ちなみにウィンザーは原子炉の冷却プールで泳いだり、原子炉の水を飲んだりもしている。

 サイエンス系メディア「How Stuff Works」によると、ウランを25㎎を摂取すると即座に「腎臓に大きなダメージを与える」とのことで、50㎎を摂取すると死に至る可能性があるという。

 もちろん真似は禁物であるし、ウィンザーが“食べた”物質が本当にウランであったかどうかはわからない。

 皮肉にもウィンザーがウランを“食べた”翌年、「チェルノブイリ原子力発電所事故」が起き、原子力産業界は大きなショックを受けた。その点で晩年のウィンザーは想いを遂げられなかったのかもしれないが、原子力の可能性を身をもって示した姿は今もこうして多くの注目を集めている。

参考:「UNILAD」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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