“灰色の侵略者”との死闘 ― UFO史の金字塔「ケリー・ホプキンスビル事件」と、世界中が誤解した“リトル・グリーン・メン”伝説

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イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)

 今から70年前、アメリカ・ケンタッキー州の片田舎で、ある一家が地球外から来たと思われる小さな生物たちと銃撃戦を繰り広げるという衝撃的な事件が起きた。後に「ケリー・ホプキンスビル事件」として知られるこの遭遇譚は、スティーブン・スピルバーグ監督の映画『E.T.』にも影響を与え、「UFO物語の祖父」とまで呼ばれるようになった。70年の時を経てもなお、この事件は人々を魅了し続けている。

1955年、ケンタッキーを震撼させた一夜

 1955年8月のある夜、2台の車がホプキンスビル警察署に猛スピードで乗り付けた。車から降りてきた人々は息を切らしながら、近くの農場で体験したばかりの恐るべき出来事を語り始めた。

「宇宙船か円盤のようなものが家の裏に着陸したんだ。そこから身長120cmくらいの“人間”が出てきて、家に近づいてきた!」

 彼らの話によれば、その生物は大きな頭と不釣り合いなほど大きな目、そして長い腕を持っていたという。一体は木の上に、もう一体は屋根の上に、そしてまた一体は窓に顔を押し付けてきた。恐怖に駆られた農家の男たちは銃を手に取り、弾薬が尽きるまで撃ち続けたが、全く効果はなかったという。

 通報を受けた警察が現場に駆けつけたが、一家の話を裏付ける証拠も、否定する証拠も見つけることはできなかった。しかし、この事件は瞬く間にケンタッキー州全土、そして全米へと広まっていった。

 ニューヨーク・デイリー・ニュース紙は「宇宙人、ケンタッキーを占拠」と大々的に報じ、ロサンゼルス・タイムズ紙も一面でこのニュースを扱った。この「ケリー・ホプキンスビル事件」は、まさに全米を震撼させたのだ。

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ホプキンスビルのゴブリンの想像図 By Tim BertelinkOwn work, CC BY-SA 4.0, Link

伝説は「ゴブリンコン」へ ― 現代に受け継がれる物語

 事件から70年、この物語は風化するどころか、地元にとって重要な文化遺産となっている。かつては毎年「ケリー・リトル・グリーン・メン・デイズ・フェスティバル」という祭りが開催され、多くのファンで賑わった。

 そして今年、70周年を記念して「ゴブリンコン」という新たなイベントが開催される。このイベントはUFOや宇宙人遭遇譚だけでなく、ビッグフットやゴーストハントといった他の超常現象も扱う、より幅広い内容になるという。

 地元の観光局「Visit Hopkinsville」もこのイベントを全面的にバックアップしている。観光局のエイミー・ロジャース氏は「私はUFOの存在を信じています。この世界にいるのは私たちだけではないはず」と語り、自身のスマートフォンの着信音が『X-ファイル』のテーマソングであることを明かした。ビジターセンターでは、エイリアン関連のお土産が人気を博しているという。

「小さな緑の男」ではなかった ― 当事者の娘が語る真相

 しかし、この事件には長年にわたる「誤解」があった。それを正そうとしているのが、事件当事者の娘であり、今回の「ゴブリンコン」にも登壇するジェラルディン・サットン・スティス氏だ。彼女は、報道された内容にはいくつかの決定的な間違いがあると指摘する。

 第一に、現れた生物の数。新聞では十数体と報じられたが、「父は、現れたのは常に同じ3、4体だったと断言していました。何度撃っても死ななかっただけなのです」と彼女は語る。

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 そして第二に、最も有名な「リトル・グリーン・メン(小さな緑の男)」という呼び名だ。

「彼らは緑色ではありませんでした。色は“ガンメタル・グレイ”、つまり鈍い鋼のような灰色だったのです。『リトル・グリーン・メン』という呼び名は、ある記者が地名の『ケリー(Kelly)』と、色の名前である『ケリーグリーン(Kelly green)』をかけた駄洒落から生まれました」

 では、なぜこのイベントは「ゴブリンコン」なのか。実は、「ゴブリン」という呼び名こそ、一家が使っていた言葉だった。

「“ゴブリン”という言葉は、私の祖母から来ました。彼女はとても信心深い人で、この奇妙な生物たちを見て最初に思ったのが、『これは悪魔が連れてきたものだ』ということだったのです」

UFO史に刻まれた金字塔

 数々の誤解や憶測を生みながらも、「ケリー・ホプキンスビル事件」がUFO史における最重要事件の一つであることに変わりはない。スティス氏は誇らしげにこう語る。

「これは素晴らしい物語です。幻想的で、一つの伝説です。UFOの世界において、これは“偉大なる物語の祖父”、まさに金字塔なのです」

 70年の時を超え、一つの田舎町の恐怖の夜は、今もなお多くの人々の想像力をかき立て、語り継がれている。

参考:The Courier-Journal、ほか

TOCANA編集部

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