人類の創造主?「エンキ」の謎 ― シュメール神話に記された古代の神々と“遺伝子操作”の秘密

古代メソポタミア神話において、最も重要とされる三柱の神々。その一柱である「エンキ」は、知恵と魔法、そして創造を司る神として、古代の人々から深く崇拝されていた。
「エンキ」という名は、シュメール語で「地の主」を意味し、時に「エア」(水の神殿)とも呼ばれた。彼は異母兄弟である天空神エンリル、父である最高神アヌと共に、メソポタミアのパンテオン(神々の体系)の中心に君臨していたのである。
しかし、彼の役割は単なる神々の一員にとどまらない。古代の粘土板に刻まれた叙事詩は、エンキこそが我々人類の「創造主」であり、そして「救世主」であったと、驚くべき物語を伝えている。
人類は“神々の労働”を肩代わりするために作られた
古代アッカドの叙事詩『アトラ・ハシース』によれば、人類が創造された唯一の目的は、「神々を労働から解放するため」であったという。
当初、下級の神々が運河の建設や農作業といった重労働を担っていたが、彼らはその過酷さに不満を募らせ、反乱を起こした。この事態を収拾するため、エンキは「人間」を創造することを提案する。
彼は、地上に存在していた類人猿(ホミニド)に対し、何らかの“操作”――現代的に解釈すれば遺伝子操作のようなもの――を行い、神々の言葉を理解し、その要求に応えることができる新たな存在を創り出した。これが、我々人類の始まりであると、古代のテキストは記しているという。
人類を大洪水から救った“救世主”エンキ
しかし、人類の創造は新たな問題を引き起こした。地上に増えすぎた人類が発する騒音が、天空神エンリルの眠りを妨げたのである。激怒したエンリルは、疫病や干ばつで人類を滅ぼそうとするが、その都度、創造主であるエンキが介入し、人類は危機を乗り越えた。
ついに堪忍袋の緒が切れたエンリルは、神々の会議を招集し、「大洪水」によって人類を完全に滅ぼすことを提案。他の神々もこれに同意し、人類の絶滅が決定された。
しかし、エンキだけは、この決定に背いた。彼は、信仰心あつき男ジウスドラ(後のノアの原型)の夢枕に立ち、巨大な船を建造して大洪水に備えるよう、密かに警告したのである。この物語が、後の旧約聖書における「ノアの方舟」の伝説の起源になったと考えられている。

文明の贈り主と「七賢人」の謎
エンキは、大地を形作り、地下深くに流れる「原初の水(アプスー)」を司る神であった。彼のシンボルは、二重らせんを描く蛇、すなわち「カドゥケウスの杖」であり、これは時に医学の象徴としても用いられる。
また、エンキは「メ」と呼ばれる、文明のあらゆる知識や技術が詰まった聖なる力を保持する神でもあった。彼は、殺害した神キングーの血を使い、人類最初の賢者であるアダパと、それに続く「アプカルル」と呼ばれる七賢人を創造したとされる。
アプカルルは、魚の姿をした賢者であり、日中は人々に文明の知識を授け、夜になると海(アプスー)の底へ帰っていったという。彼らは、エンキから授かった「メ」の力を地上にもたらし、人類の文明の礎を築いたのだ。

古代都市エリドゥに築かれたエンキの主神殿「E-abzu(アプスーの神殿)」は、6500年以上前に建立された、南イラクで知られる最古の神殿である。この神殿は、4500年もの長きにわたり18回も拡張され続けた。この事実は、エンキという神が、メソポタミア文明の黎明期からその終焉まで、いかに重要視されていたかを物語っている。
エンキの物語は、単なる神話として片付けるには、あまりにも具体的で示唆に富んでいる。それは、人類の起源と文明の発展の裏に、我々の知らない何者かの意図的な介入があった可能性を、現代の我々に問いかけているのかもしれない。
参考:The Ancient Code、ほか
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2024.10.02 20:00心霊人類の創造主?「エンキ」の謎 ― シュメール神話に記された古代の神々と“遺伝子操作”の秘密のページです。アヌンナキ、シュメール神話などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで