都市を壊滅させる「超せん断地震」は、いつ起きてもおかしくない ― 科学者が鳴らす“ソニックブーム地震”への警鐘

米新たな、そしてこれまで知られていなかった壊滅的な地震の脅威が迫っている。その名は「超せん断地震(Supershear Earthquake)」。断層の破壊が、地震波そのものよりも速く伝播するという、常識外れの超高速地震だ。それは、戦闘機が音速を超える際に発生する「ソニックブーム」のような衝撃波を生み出し、通常の地震とは比較にならないほどの破壊力で都市を襲うという。科学者たちは今、「カリフォルニアで次に起きる大地震は、この超せん断地震である可能性が高い」と、緊急の警告を発している。
“ダブルストライク”の恐怖―通常の地震と何が違うのか
なぜ、超せん断地震はこれほどまでに危険なのか。その理由は、「ダブルストライク」と呼ばれる特有の破壊メカニズムにある。
まず、地震波よりも速く伝わる衝撃波(ショックフロント)が、ソニックブームのような突然の強烈な一撃を地表に与える。そして、その直後に、断層破壊そのものによる、長く続く激しい揺れが襲いかかる。この二重の攻撃は、通常の地震ではびくともしないはずの建物さえも、いとも簡単に破壊してしまう可能性があるという。
南カリフォルニア大学のアーメド・エッタフ・エルバンナ教授は、「カリフォルニアの人口の70%が活断層から30マイル(約48km)以内に住んでいることを考えると、これは極めて深刻なリスクだ」と語る。電力網、交通網、水道といったライフラインは寸断され、通信網は数日から数週間にわたって麻痺する可能性もある。
理論から現実へ―トルコ大地震が証明した悪夢
この「超せん断地震」という概念は、1970年代に初めて提唱されたが、長らく理論上の可能性にすぎないと見なされてきた。しかし、2002年のアラスカ・デナリ地震でその特徴的な波形が初めて観測され、現実の脅威であることが証明された。
そして、その恐るべき破壊力が世界に示されたのが、5万人以上の死者を出した2023年のトルコ南東部地震だ。この地震では、断層破壊の一部が、秒速数キロという地震波を超えるスピードで伝播し、壊滅的な被害をもたらしたことが、後の分析で明らかになっている。
エルバンナ教授らの調査によれば、サンアンドレアス断層のような「横ずれ断層」で起きるマグニチュード7以上の大地震のうち、実に3分の1以上が、この超せん断地震の特性を持っていたという。

建築基準法が想定していない“未知の揺れ”
さらに深刻なのは、現在の建築基準法が、この超せん断地震が引き起こす特有の揺れを、十分に想定していないという事実だ。
超せん断地震は、特に中低層の建物にとって最も危険とされる、1秒間に2~3回という周期の揺れを増幅させる特性を持つ。現在の耐震基準は、このような「断層と平行方向に伝わる、増幅された強烈な揺れ」を明確には考慮していない。つまり、耐震設計をクリアしているはずの建物でさえ、この未知の揺れの前には無力である可能性があるのだ。
エルバンナ教授は、「パニックになる必要はない。しかし、これらのシナリオを注意深く研究し、備える必要がある」と強調する。超せん断地震のリアルなシミュレーションを行い、その揺れの特性を解明し、耐震基準を早急に見直すこと。そして、主要な断層付近の監視体制を強化すること。それが、この“ソニックブーム地震”という黙示録的な災害を、現実の悲劇にしないために、私たちに残された唯一の道なのかもしれない。
参考:Daily Mail Online、ほか
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2024.10.02 20:00心霊都市を壊滅させる「超せん断地震」は、いつ起きてもおかしくない ― 科学者が鳴らす“ソニックブーム地震”への警鐘のページです。地震、地震波などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで