世界最恐のお化け屋敷で“モンスターを怖がらせる”女性… 「恐怖」という感情が“脳から消えた”人々のヤバすぎる日常

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Image by Alexa from Pixabay

 燃え盛るビルに飛び込み、見知らぬ人を救う。あるいは、不正を告発し、権力に立ち向かう。これらの「勇気ある行動」は、自らの命の危険さえも顧みず、「恐怖」を克服することで初めて可能になる。

 しかし、もしその「恐怖」という感情そのものが、生まれつき、あるいは事故によって、脳から完全に消え去ってしまったとしたら?

 世界には、文字通り「恐怖を感じない」人々が、ごく稀に存在する。彼らにとって、死を目の前にすることは、朝食を食べることと何ら変わりない。これは、彼らの驚くべき人生と、恐怖を司る脳の謎に迫る物語だ。

脳の“恐怖センター”―扁桃体の損傷

 恐怖という感情は、数億年もの進化の過程で、私たちが生き残るために獲得した、最も原始的で重要な本能だ。危険を察知すると、脳の「扁桃体(へんとうたい)」と呼ばれる領域が活性化。心拍数を上げ、ストレスホルモンを放出し、「戦うか、逃げるか」の準備を全身に指令する。

 しかし、病気や事故によって、この扁桃体が損傷、あるいは機能しなくなると、人間は恐怖を感じる能力を失ってしまうのだ。

ナイフを突きつけられても冷静な女性「SM」

 アイオワ大学の研究者たちが調査した、イニシャル「SM」で呼ばれる女性。彼女は、カルシウム沈着によって脳の扁桃体が機能しなくなる、世界で400例ほどしか報告されていない極めて稀な遺伝性疾患「ウルバッハ・ヴィーテ病」を患っている。

 科学者たちは、彼女を様々な“恐怖”に直面させた。

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画像はUnsplashVadim Bogulovより

毒蛇や毒グモ:ヘビは大嫌い」と語る彼女だが、いざ目の前にすると、好奇心に駆られて3分以上もヘビを撫で回し、店員が止めるのも聞かずに、より危険なヘビに触ろうとした。

世界最恐のお化け屋敷: 他の参加者が悲鳴を上げる中、彼女は常に集団の先頭を歩き、飛び出してくるモンスターに笑いかけ、話しかけた。ある時には、モンスター役の頭を突ついて、逆に怖がらせてしまったという。

ホラー映画: 『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『シャイニング』といった名作を見せても、彼女は一切の恐怖を示さず、むしろ「面白い」と楽しんでいた。

 さらに衝撃的なのは、彼女の過去の体験だ。彼女はこれまで、強盗にナイフを喉元に突きつけられたり、家庭内暴力で殺されかけたりと、何度も命の危険に晒されてきた。しかし、そのいずれの状況においても、彼女は恐怖を感じなかったと証言する。

 ナイフを突きつけられた際には、「私を殺すなら、まず神の天使たちを倒してからにしなさい」と、冷静に犯人を諭したという。男が怯んで彼女を解放すると、彼女は走って逃げるでもなく、悠然と歩いてその場を去り、翌日にはまた同じ公園を散歩していた。

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画像はUnsplashPatrick Muellerより

副腎を失い“無敵”になった男、ジョーディ・サーニック

 イギリス人のジョーディ・サーニック氏は、また別の理由で恐怖を失った。彼は、ストレスホルモンであるコルチゾールが過剰に分泌される「クッシング症候群」と診断され、その治療のために副腎を摘出した。

 副腎は、恐怖や興奮を感じた際にアドレナリンを分泌する臓器だ。これを失ったことで、彼は恐怖だけでなく、あらゆる興奮する感情を失った。

 2013年、彼はスカイダイビングに挑戦したが、全く興奮しなかったことで、自身の異常に気づいた。その後、高さ128メートルの塔をロープ一本で降下するという危険なスタントにも挑戦したが、彼にとっては「つまらない用事」程度の感覚だったという。

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画像は「ZME Science」より

恐怖は“諸刃の剣”―彼らが教えてくれること

 てんかんの治療のために扁桃体の一部を切除し、恐怖を感じにくくなったジョディ・スミス氏は、その感覚を「ニュアンスがある」と語る。「崖から落ちたくない、という知的な理解はある。ただ、恐怖という感情的な反応が起きないだけだ」と。

 恐怖を感じないことは、一見すると“超人的な能力”に思えるかもしれない。しかし、それは同時に、痛みを和らげるアドレナリンの欠如や、モチベーションを維持するための興奮を得られないといった、深刻なハンディキャップももたらす。

 恐怖は、時に私たちの行動を縛る“足枷”となる。しかし、それは同時に、私たちを危険から守り、生き長らえさせてくれる“盾”でもあるのだ。

 SMやサーニック氏のような稀有な症例は、不安障害やPTSDといった、過剰な恐怖反応によって引き起こされる精神疾患の治療法を開発する上で、極めて重要な手がかりを与えてくれる。恐怖という感情の謎を解き明かすことは、人類が自らの心をコントロールするための大きな一歩となるのかもしれない。

 恐怖は“心の毒”にも、“命の薬”にもなる。どうやら人生には、適度なスパイスとして少しくらいの恐怖が必要なようだ。

参考:ZME Science、ほか

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