白い花嫁の霊とドライバーを事故に誘う謎の幽霊車【ロシア出身怪談師・特別寄稿】
実在する“死のハイウェイ”の恐怖… 白い花嫁の霊とドライバーを事故に誘う謎の幽霊車【ロシア出身怪談師・特別寄稿】
広大な大地と、数多くの伝承が息づくロシア。冷徹な冬の夜や広大な森が抱える恐怖は、この地が持つ独特の雰囲気を一層引き立てている。
そんなロシア出身の怪談師であり、怪談作家でもある上田クセーニャさんから、今回特別にロシアの怖い話を寄稿してもらった。上田クセーニャさんは日本の心霊文化に強い興味を持ち、ロシアで日本人の心霊体験をまとめた本を出版している。今回はその独自の視点から、日本ではなかなか触れることのできないロシアの恐怖をお届けしよう。(編集部)

モスクワ近郊の町、リトカリノにある「死のハイウェイ」は危険な道路として知られている。モスクワ川のほとりに位置し、リトカリノ市とモスクワを結ぶ見通しの良いこの道は、地元の人々の間で長年にわたり「危険な道」として噂されてきた。
この道は1936年に建設された。工事は主に手作業で行われ、手押し車や馬車も使用されたと伝えられている。ソ連時代にはこの道を通じて近隣の町や湖に行く人が多く、夏になると私も友人たちとこの道を通って泳ぎに行ったものだ。しかし、車窓から頻繁に見える十字架や花束は恐怖を感じさせ、この場所が普通ではないことを子供心に感じていた。
この道路では数十年にわたり、数え切れないほどの事故が発生してきた。特に「ヴォルクーシャ」というバス停付近は事故多発地点として知られ、原因不明の衝突事故が頻発していた。地元の人々は「この区間を走ると意識がぼんやりする」と語り、まるで見えない霧に包まれるような感覚になると証言している。

私にとってこの道は、夏の思い出と恐怖が入り混じる特別な場所である。毎年、友人たちと近くの湖へ泳ぎに行くために車で通った。真夏の車内は蒸し暑く、窓を開けると湿った森の匂いとタイヤの音が響いたものである。道沿いには必ず十字架や写真付きの墓石が見えた。それらは事故で亡くなった人を悼むために建てられたものだ。十字架が見えるたびに私たちは息をひそめ、車内の会話も自然と止まった。木々に囲まれた狭い道、遠くで聞こえる鳥や虫の声——まるで世界が一瞬、別の次元に変わったかのような感覚に襲われるのだ。
インターネット上の投稿や新聞記事によると、1980年代後半から90年代にかけて、ここでの事故件数が急増したとされる。ドライバーたちは「急にハンドルが効かなくなった」「まるで濃霧の中に入ったみたいだった」「一瞬意識が無くなる」と証言している。
地元の人々の間では「この道には何かがいる」「夜に一人で歩くと帰って来られない」といった噂も存在する。
もっとも有名なのは「白いドレスを着た花嫁の霊」の話である。彼女は夜の道路脇に現れ、近づいた瞬間に消える。その花嫁を見た人はよく事故に遭うと言われている。実際、1989年にこの道路でトラックが結婚したばかりの若い夫婦の車に衝突し、花嫁だけが亡くなった事故があった。それ以来、目撃証言が急増している。

この道にまつわる怪談は他にも存在する。ある運転手は、深夜に猛スピードで迫ってくる乗用車のライトを見たと証言している。しかし、その車は次の瞬間、まるで空気に溶けるように姿を消してしまったという。似たような体験談は複数報告されており、地元では「死のハイウェイの幽霊車」と呼ばれている。
2006年12月、独立調査グループ「ネマン」がこの地域の森で発見された「隕石クレーター」の調査を行った。調査では19世紀末に落下した可能性のある隕石の破片が見つかり、磁場や地質的な異常が周囲に影響を及ぼし、ドライバーが錯乱状態に陥る可能性があると報告された。
更に地元では、この道路がかつて「自殺者の墓地」の跡地に建設されたという噂もある。事故が多発するのは、その霊がドライバーを呼び寄せるからだと信じる人も少なくない。しかし、リトカリノ郷土史博物館の関係者はこの説を否定しており、「この道の下に墓地があった記録は存在しない」と説明している。科学的には説明がつかない現象である一方、地域の人々の恐怖と想像力がこの道をさらに不気味な存在にしているのかもしれない。

2025年現在でもこの地域で事故は続いている。恐怖を和らげるため、かつて道路沿いに立てられていた十字架や遺影付きの記念碑は撤去された。「ヴォルクーシャ」バス停も閉鎖され、バスはもう停まらない。
リトカリノの死のハイウェイは単なる交通事故多発地点ではなく、土地そのものが抱える謎と人々の恐怖が積み重なって生まれた現代の怪談と言えるだろう。科学的な調査が進んだ今でも、なぜここでこれほど多くの事故が起こるのかは完全には解明されていない。だからこそ、この場所は今も人々を惹きつけ、不安にさせ続けているのだ。
(文:上田クセーニャ)
怪談イベント「西洋怪談」開催
こんにちは、上田クセーニャです。
10月、ハロウィンシーズンにぴったりのスペシャル怪談イベントを金沢で開催します!
今回のテーマは「魔女」「呪い」「怪しいものたち」。
日本各地で集めた不思議な話や、ちょっと背筋が寒くなるようなエピソードをたっぷりお話しします。
普段はYouTubeで怪談や心霊スポット探索をしていますが、金沢でみなさんと直接お会いできる機会はとても貴重です。
ぜひこのハロウィンシーズン、一緒にゾクッとする夜を過ごしましょう。
お申し込みはポスターのQRコードからお待ちしています!
日時:2025年10月18日
会場:「シュレディンガーの猫」(石川県金沢市本町1-8-18)
開演:1部 13:00
2部 18:00
怪談師:上田クセーニャ
チケット: 3,000円(税込み)※1部、2部共通
YouTubeチャンネル『クセーニャは見た‼️』でも活動中!
https://www.youtube.com/@KsenyaSawGhost
※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。
関連記事
人気連載
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...
2024.10.02 20:00心霊実在する“死のハイウェイ”の恐怖… 白い花嫁の霊とドライバーを事故に誘う謎の幽霊車【ロシア出身怪談師・特別寄稿】のページです。幽霊、ロシア、ハイウェイ、花嫁などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで