その寒さは帝国さえも滅ぼした…「夏のない年」から「白いハリケーン」まで、歴史を変えた5つの“残酷な冬”

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 セントラルヒーティングや高精度の天気予報がなかった時代、冬は単なる寒さ以上のものを意味していた。それは不安と危険の季節であり、過酷な冬の到来は、死や病気、そして完全な孤立をもたらす可能性があった。火山噴火による異常気象から、前例のない大吹雪まで、歴史に刻まれたこれらの冬は、交通の遅れや雪かきといった現代の悩みとは比較にならないほどの爪痕を人類に残している。

 ここでは、文明を崩壊の危機に追いやった「史上最悪の5つの冬」を紹介する。

1. 1709年の大寒波

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1709年に凍ったラグーンの一部、イタリア、ベニス Gabriele BellaNew Scientist (Image: The Art Archive / Querini Stampalia Foundation Venice / Gianni Dagli Orti), パブリック・ドメイン, リンクによる

 フランスで「大いなる冬(Le Grand Hiver)」と呼ばれた1709年の大寒波は、ヨーロッパ全土を未曾有の極寒に陥れた。1708年から1709年にかけて約3ヶ月間続いたこの寒さは、フランスやイギリスの農業産業を壊滅させた。

 歴史家によると、この過酷な冬によりイングランドのGDPは13%も低下し、フランスでは寒さ、病気、飢餓により50万人以上が命を落としたと推定されている。「小氷期」と呼ばれる寒冷化の時期と重なったこともあり、社会的な混乱に拍車をかけた悲劇的な冬であった。

2. 536年の火山性の冬

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「人類史上最悪の年」としばしば称される西暦536年の冬は、まさに悪夢のような一年だった。北半球での大規模な火山噴火(アイスランドまたはアラスカ説が有力)により、大気中に火山灰が充満し、太陽光が1年以上も遮られたのだ。

 世界の平均気温は最大2℃低下し、ユーラシア大陸全体で作物が不作となり、大規模な飢饉が発生した。さらに追い打ちをかけるように「ユスティニアヌスのペスト」が流行し、推定5000万人の命が奪われた。この連鎖的な大惨事は、ササン朝ペルシアやグプタ朝といった帝国の崩壊を招き、ユーラシアの地政学的景観を永遠に変えることとなった。

3. 1816年:夏のない年

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過去千年間の世界の平均気温。1800年の後に短期間だが気温が低下している Robert A. Rohdehttp://www.globalwarmingart.com/wiki/File:1000_Year_Temperature_Comparison.png, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

 1815年のインドネシア・タンボラ山の噴火は、人類史上最大規模の火山爆発とされている。大量の灰と破片が大気中に放出された影響は翌1816年に顕著に現れ、ヨーロッパで記録史上最も寒い冬をもたらした。これが「夏のない年」と呼ばれる所以だ。

 ヨーロッパとアジア全域で作物が全滅し、世界的な飢饉と病気の蔓延を引き起こした。一方で、この陰鬱で寒い気候がもたらした意外な文化的産物もある。メアリー・シェリーの名作『フランケンシュタイン』は、この年の暗い日々に、屋内に閉じこもって執筆されたものだ。

4. 1888年の大吹雪

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By Photograph collection of The Museum of the City of New York – http://historyimages.com/Vintage-NY/Blizzard-88.htm, Public Domain, Link

 アメリカ史において最も深刻な吹雪の一つとされるのが、1888年の大吹雪だ。3月12日未明から降り始めた豪雨は雪へと変わり、北東部全域を最大127センチの積雪で埋め尽くした。「白いハリケーン」と呼ばれたこの嵐により、電信網は寸断され、鉄道も停止。ニューイングランド地方の多くの家族が最大1週間、家の中に閉じ込められた。

 ニューヨーク市だけでも200人、全体で約400人が犠牲となった。しかし、この災害を教訓にニューヨーク市は電線や鉄道の地下化を進め、現在の地下鉄網の基礎が築かれることとなった。

5. 1993年の「世紀の嵐」

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By NASA – NASA, Public Domain, Link

 比較的最近の事例として記憶されているのが、1993年の「世紀の嵐」だ。3月中旬、アメリカの半分とカナダ東部を襲ったこの巨大なノーイースター(北東風を伴う嵐)は、大西洋岸沿いに多くの雪をもたらした。

 ハリケーン並みの暴風により約1000万世帯が停電し、交通網は麻痺。少なくとも300人の命が奪われ、被害額は60億ドルを超えた。特にテネシー州では約1.5メートルもの積雪を記録した。それでも、過去の事例と比較すれば被害は抑えられたと言えるだろう。気象予報技術の進歩により、数日前から嵐の到来が正確に予測されていたため、自治体や政府は対策を講じる時間を確保できたのである。

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Image by Pete Linforth from Pixabay

 こうした歴史的な「最悪の冬」は決して遠い世界の話ではない。日本にもまた、寒さと雪が社会を揺るがした記憶が残されている。江戸時代後期の天明の大飢饉では、異常な寒冷化と冷害が農村を直撃し、多くの人々が飢えと寒さの中で命を落とした。近代に入ってからも、1963年の昭和38年豪雪では日本海側を中心に都市機能が麻痺し、集落の孤立や多数の犠牲者を生んでいる。

 高度な技術とインフラに支えられた現代においても、冬は依然として人類の脆さを映し出す存在だ。過去の記録に刻まれた極寒の季節は、自然の前で文明がいかに無力になり得るかを、いまなお私たちに突きつけている。

参考:MENTAL FLOSS、ほか

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