兵士たちが次々と鼻血、そして吐血…? マドゥロ拘束作戦で米軍の「秘密の音響兵器」が放たれたのか

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 ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束した電撃的な作戦は、現代の軍事力の粋を集めたものだった——。

 夜明け前の奇襲、完全に同期された電子戦、そして突如として遮断された通信。一国の指導者が生け捕りにされ、裁判にかけるために米国へと移送されるまでの鮮やかな手際は、世界に衝撃を与えた。

 しかし、この大規模な極秘作戦の陰で、ある奇妙な噂がSNSやタブロイド紙を賑わせている。それは、米軍が強力な「音響兵器(ソニック・ウェポン)」を使用し、それを受けたベネズエラ軍兵士たちが鼻や口から血を流して倒れたというものだ。

 一見すると、ネット上のデマのように聞こえるこの話だが、ホワイトハウスの報道官がこの証言をSNSで拡散したことで、議論は一気に加速した。果たして、SF映画のような最新兵器は実戦投入されたのか。

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ニコラス・マドゥロ Iliana Rosales – https://prensapresidencialvenezuela.gob.ve/index.php/2025/12/31/, パブリック・ドメイン, リンクによる

兵士を襲った「謎の音波」:鼻血と吐血を伴う衝撃の証言

 噂の出所は、メッセージアプリ「WhatsApp」で拡散されたスペイン語の音声記録とされる。証言者はマドゥロ氏に忠実な警備担当者だ。彼の語る内容は、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

「警戒にあたっていたが、突然すべてのレーダーシステムが説明もなく停止した。次に見たのは、空を埋め尽くす大量のドローンだ。どう反応すべきか分からなかった」と彼は振り返る。

 さらに衝撃的なのは、米軍が放ったとされる「音響兵器」の威力だ。「ある時点で、彼らは何かを放った。表現しがたいが、それは非常に強烈な音波のようだった。突然、頭が内側から爆発するような感覚に襲われ、全員が鼻から血を流し始めた。中には血を吐く者もいた。私たちは地面に倒れ、一歩も動けなくなったのだ」

 現在、米国防総省(DoD)はこの作戦で音響兵器や指向性エネルギー兵器(DEW)を使用したという公式な発表はしていない。証言の裏付けも乏しいのが現状だが、このセンセーショナルな物語は、軍事技術の進化が「科学的現実」と「フィクション」の境界を曖昧にしている現状を浮き彫りにしている。

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科学が突きつける壁:音響兵器で「吐血」はあり得るのか?

「音響兵器」という言葉は、暴徒鎮圧用の強力なスピーカー(LRADなど)から、低周波や超音波を利用した未知の兵器までを指す総称だ。強力な音波が人間に苦痛を与え、吐き気やめまい、聴覚障害を引き起こすことは医学的にも立証されている。

 しかし、今回の証言にある「鼻血」や「吐血」となると、生理学的な疑問符がつく。音響学の専門家によれば、屋外という開放された環境で、遠距離から内臓に損傷を与えて出血させるほどのエネルギーを音波で送り込むには、物理的に膨大なパワーが必要となる。音は距離とともに急速に減衰し、風や地形の影響も受けやすいためだ。

 もし仮に、内臓から出血させるほどの圧力を生む兵器が使われたのであれば、鼓膜の破裂や肺の損傷など、爆風(爆発)に近い外傷が広範囲で見られるはずだ。しかし、現時点ではそのような臨床的証拠は一切報告されていない。証言にある「音波」の正体は、特殊部隊が突入時に使用する閃光発音筒(スタングレネード)や、爆発に伴う衝撃波、あるいは極限の混乱状態が生んだ感覚の歪みである可能性が高い。

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画像はUnsplashLogan Vossより

ハイテク電子戦の威力と「見えない武器」の正体

 秘密兵器説に頼らずとも、米軍にはベネズエラ軍を無力化できる十分に強力な「公にされている技術」がある。今回の作戦には、電子戦専用機「EA-18G グラウラー」を含む150機以上の航空機が投入された。

 グラウラーのような電子戦機は、敵のレーダーや通信網を強力な電波で妨害(ジャミング)し、防空網を完全に「盲目」にする能力を持つ。突如として無線が通じず、レーダーが消え、組織的な反撃が不可能になる状況は、現場の兵士に「未知の力で制圧された」という強烈な恐怖と孤立感を与える。

 つまり、秘密の音響兵器を持ち出さなくとも、現代の電子戦テクノロジーだけで、数分以内に防衛網を崩壊させ、兵士たちを行動不能に陥らせることは十分に可能なのだ。

指向性エネルギー兵器(DEW)の現在地

 一方で、米軍が「指向性エネルギー兵器(DEW)」の研究に力を入れているのは事実だ。これにはレーザー、高出力マイクロ波、ミリ波システムなどが含まれる。

 例えば、米軍が公開している「アクティブ・ディナイアル・システム(ADS)」は、目に見えない熱線を照射して皮膚の表面を急激に熱し、耐えがたい痛みを与えて対象を退散させる非致死性兵器だ。しかし、これはあくまで表面的な熱の痛みを利用するものであり、今回の噂にあるような「内臓からの出血」を引き起こす設計にはなっていない。

 また、過去に外交官らが謎の体調不良を訴えた「ハバナ症候群」に関連してマイクロ波兵器の存在が議論されたこともあるが、最新の米インテリジェンス機関の評価では、外国勢力によるエネルギー兵器の使用という説は「極めて可能性が低い」と結論づけられている。

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なぜ「秘密兵器」の噂は広まるのか

 今回の作戦後、情報の空白を埋めるかのように刺激的なコンテンツが次々と溢れ出した。特に、AI生成された偽画像や誇張された証言が、マドゥロ氏拘束という歴史的事実のインパクトをさらに強めている。

 興味深いのは、今回の噂が「米軍の圧倒的な神格化」に寄与している点だ。証言者は「米国と戦おうとする者への警告だ。彼らが何ができるか、想像もつかないだろう」と語っている。米軍を「魔法のようなテクノロジーを持つ無敵の存在」として描く物語は、真偽にかかわらず、心理的な抑止力として強力に機能する。

 結論として、マドゥロ氏拘束作戦における「音響兵器」の使用は、現状では証拠のない憶測の域を出ない。科学的な実現性よりも、軍事的な伝説やデマとしての側面が強いと言えるだろう。しかし、電子戦やドローンを駆使した多次元的な攻撃が、現場の兵士に「理解を超えた恐怖」を与えたことだけは間違いなさそうだ。

参考:The Debrief、ほか

TOCANA編集部

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