世界初の「UFO(空飛ぶ円盤)目撃者会議」とは? FBIや米軍が監視した幻のイベントの顛末

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 今でこそUFOイベントは世界中で開かれているが、その「第1回」がいつどこで行われたかを答えられる人は少ない。それもそのはずで、正解は「開かれなかった」である。

 1949年、アメリカ南部の小さな町で、世界初の空飛ぶ円盤目撃者会議が大真面目に計画された。全米と英国から手紙が殺到し、FBIと陸軍と空軍が揃って神経を尖らせる騒ぎになる。それでもこの会議は、開催日を迎えることなく消えたのだ。

「自動車のタイヤ大の円盤」が現れた町と、記者の思いつき

 1949年はUFO史の分水嶺だった。4月27日、米軍の広報部門が空軍による22ページの予備調査要旨を公表する。目撃報告の大半は航空機や星、気球の誤認だが、すべては説明しきれておらず疑問符が残る——そう認める内容だった。報道各社はこの一節に飛びつき、円盤は冗談ではないという趣旨の見出しが全米を駆け巡る。

 7月、ルイジアナ州中央部、人口3万4000人ほどの町アレクサンドリアで目撃が相次いだ。

 5日午後9時半、屋外にいた姉妹が飛行機より低くゆっくり動く物体を見ている。空軍の調査官には、自動車のタイヤほどの灰色の円盤で中心が琥珀色に光り、約30秒漂って木立の陰へ消えたと説明した。数日後には5人が同時に、東へ西へ向きを変える光を約5分間追っている。

 この興奮を紙面から眺めていたのが、地元紙の記者アドラス・ポール・ラボルド氏(当時34歳)だ。地域振興を掲げる青年実業家クラブ(YMBC)の会長でもあった彼は、半ば思いつきで提案する。円盤を見た人間を全米から集め、証言を突き合わせて事実かどうかを見極める会議を開いてはどうか——。構想は通信社に乗って全米へ広がった。

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画像は「The Saucers That Time Forgot」より

FBIと陸軍が動いた——「破壊活動」として上申された円盤会議

 反響は「洪水」と形容された。冗談好きやいたずらの手紙も混じったが、クラブは招待状を返送し続ける。7月半ばの報道では十指に余る州から代表が集まる見込みとされ、政府機関も公式の観察者を送ると伝えられた。会場はホテル・ベントリー、日程は12月10日と11日に決まる。

 クラブ幹部がFBIの特別捜査官を会議に招き、届いた大量の書簡について説明すると、情報は本部へ上申された。FBIが警戒したのは宇宙人ではなく詐欺である。参加資格や公式代表の肩書き欲しさに、円盤を見たと偽る人間が現れかねない——文書にはそう記されている。

 陸軍情報部からも通報が入った。7月15日、第4軍のG-2に属する人物が通信社の記事を見てFBIの地方支局長に知らせ、情報は長官まで上がった。

 8月9日付の空軍特別捜査局の文書には第9地区の代表者を出席させると明記され、この件は「破壊活動」の分類で上層部へ回されている。田舎町の青年団体が企画した余興が、三つの機関に同時に見張られていたことになる。

英国からも手紙が届いたのに、確定した申込は2件だった

 11月中旬、通信社は十数州の50人以上に招待状が送られたと報じた。だが確定していた州外からの登録は、ジョージア州バルドスタの女性ただ1人。彼女自身、7月に目撃が報じられ空軍の調査も受けている。

 同じ頃、ラボルド氏は10人集まれば開催すると語っていた。その時点の予約は2件。1件が彼女で、もう1件はバークスデール基地の空軍中佐だ。参加者の半分が軍人という有様である。

 反応が最も多かったのは中年の未亡人たちだったが、旅費の当てがないという返事ばかり。オハイオ州の夫婦は欠席の連絡に添えて、翼を付けた紙皿を会場の装飾にどうぞと送ってきた。

 破綻の原因は超常的なものではなく、身も蓋もなく実務的だった。参加は目撃者と調査員に限られ、一般公開ではない。講演も出し物も告知されていない。数百マイルを自費で来る客に、中身は自分で用意しろと求める構造である。

 しかも日程はクリスマスの2週間前だ。12月1日の会合では大手グラフ誌が取材に関心を示すという朗報も出たが、同じ席で延期の可能性が語られた。そして12月7日、中止が正式に決まる。

 翌週、クラブは例年通りの晩餐会を開き、円盤のない日常へ戻っていった。皮肉なのはその直後だ。雑誌『トゥルー』がドナルド・キーホーの「空飛ぶ円盤は実在する」を掲載し、爆発的な反響とともにUFOは一過性の新聞ネタから巨大な産業へ変わっていく。

 もしあの12月、ホテル・ベントリーに全米の目撃者が集まっていたら、UFO史はどう転んでいただろうか。証言が突き合わされ、記録が取られ、当局の観察者が同席する場は、その後の熱狂の中で二度と成立しなかった。

 1949年のアレクサンドリアで確かに動いていたのは、空飛ぶ円盤ではなく、目撃者を静かに数えていた政府のほうだったようだ。

参考:The Saucers That Time Forgot、ほか

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