【TOCANA的UMAファイル #22】「ポポバワ」 ── 疑う者を狙い、黙る者のもとへ戻ってくる“噂させる怪物”

インド洋に浮かぶザンジバルには、奇妙なルールを持つ怪物がいる。その存在を信じない者ほど狙われやすく、襲われたことを誰にも話さずにいると、また来るというのだ。疑っても黙っても駄目なら、残る道はひとつしかない。信じて、人に話すことである。
基本データ
名前:ポポバワ(Popobawa)。スワヒリ語で「コウモリ(popo)の翼(bawa)」を意味する
生息地:タンザニア沖のザンジバル諸島。ペンバ島で生まれたとされ、本島ウングジャや本土の沿岸都市にも現れた
初出:1960年代半ばとも、60年代末から70年代初めともいわれ、諸説ある
姿:決まった姿を持たない、変身する悪霊(シェターニ)とされる。人にも獣にも化け、硫黄のような悪臭を伴うこともある。懐疑派の調査者ジョー・ニッケルが1995年に紹介した描写では、一つ目で耳のとがった小人の体に、コウモリの翼と鉤爪を備えていた
由来:怒ったシェイク(イスラム教の長老)が隣人への復讐のためにジン(精霊)を放ったものの、制御できなくなった──という起源譚が広く語られている
事件簿
最初の騒ぎは、1964年の革命から間もない1960年代のペンバ島だったとされる。当時の在住者の記録によれば、初代大統領アベイド・カルメは「来られるものなら私のところへ来い」とポポバワに挑み、ポポバワは現れず、島に平穏が戻ったそうだ。
最大の騒ぎは1995年。ペンバ島で始まった夜の襲撃の訴えは、3月には本島のザンジバル・タウンへ飛び火した。寝ている男女にのしかかり、性的な暴行を加えるとされ、人々は家を出て焚き火を囲んで夜を明かした。英ガーディアン紙は、主要病院が肋骨を折った男性たちを治療したと伝えている。ポポバワは特に「信じない者」を狙うと噂され、霊など信じないと語る農民までが「何かにのしかかられた」と証言した。
2007年には、米国の懐疑派ライター、ベンジャミン・ラドフォードが現地調査に入った。話を聞いた医師たちは、被害者を治療したことは一度もないと答えたという。
ホントカナ?
正体候補には、懐疑派ジョー・ニッケルの「金縛り(睡眠麻痺)」説や、初の複数政党制選挙を控えた時期と重なったことからの政治がらみ説がある。だが金縛りでは一家を順に襲う話は説明しにくく、骨折の報道と「誰も診ていない」という聞き取りは食い違ったまま。ラドフォードの調査自体も、のちに研究者から方法に根本的な欠陥があると批判された。
最大の矛盾は、ポポバワのルールそのものだ。信じなければ狙われ、黙っていればまた来る。関わった者は、信じていようと疑っていようと、最後には人に話すしかない。現にニッケルの記事の題は「懐疑派を襲うザンジバルの悪魔」(1995年)、続報は「いまも懐疑派を襲撃中」(2018年)。否定しようとした側が、20年以上この名を広め続けてきた。黙りもせず否定もせず、「来い」と呼びつけたカルメの前にだけ、ポポバワは来なかったのである。この記事もまた、すでにそのルールに従っているのかもしれない。
TOCANA的まとめ
研究者キャトリーナ・デイリー・トンプソンは、ポポバワの話が、性やジェンダーといった口にしにくい話題に触れる器になってきたと論じている。黙っていると来る怪物は、話すきっかけをくれる怪物でもあったのだ。騒ぎの夜の魔除けも、結局は近所で焚き火を囲んで語り合うことだった。世界遺産ストーン・タウンの路地、クローブの香りが漂うペンバ島。この島々の夜は、話の輪に加わるのがいちばんの魔除けになりそうだ。
トリビア
「コウモリの翼」という名は、姿ではなく、襲撃のときに落ちる黒い影を指すとされる。本体の姿は変わり続けるからだ。1995年には、ポポバワは7人組だという噂まで流れていた。
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2024.10.02 20:00心霊【TOCANA的UMAファイル #22】「ポポバワ」 ── 疑う者を狙い、黙る者のもとへ戻ってくる“噂させる怪物”のページです。怪物、UMA、TOCANA的UMAファイルなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで

