巨匠スコセッシが選んだ”最も怖いホラー映画”11選… 1位は意外なあの名作

『タクシードライバー』『グッドフェローズ』『ディパーテッド』で知られる映画界の巨匠、マーティン・スコセッシ監督。暴力と狂気を描き続けてきた彼だが、意外にも正面からホラーを撮ったことはほとんどない。
その巨匠がついにゴシック・ホラーに挑むという。ピーター・キャメロンの同名小説を原作とする新作『What Happens at Night』(原題)だ。これを機に、監督がかつて挙げた「最も怖いホラー映画」のリストに改めて注目が集まっている。
1位は『たたり』、リストの半数近くを占める「家」の恐怖
1. 『たたり』(1963年)
2. 『Isle of the Dead』(原題、1945年)
3. 『呪いの家』(1944年)
4. 『エンティティー 霊体』(1982年)
5. 『夢の中の恐怖』(1945年)
6. 『チェンジリング』(1980年)
7. 『シャイニング』(1980年)
8. 『エクソシスト』(1973年)
9. 『悪魔の夜』(1957年)
10. 『回転』(1961年)
11. 『サイコ』(1960年)
リストの頂点に置かれたのは、1963年の『たたり』である。『ウエスト・サイド物語』のロバート・ワイズが監督し、シャーリイ・ジャクスンの小説『丘の屋敷』を映画化した一作だ。心霊現象の調査に集まった人々が、屋敷そのものの悪意に呑まれていく。血しぶきではなく、じわじわと忍び寄る空気で観客を締め上げる作風として知られる。
驚くのは、同じ系譜の作品がリストに並んでいることだ。英国コーンウォールの屋敷に越した兄妹が怪異に見舞われる1944年の『呪いの家』。ジョージ・C・スコット演じる作曲家がシアトルの邸宅で奇妙な出来事に遭遇する1980年の『チェンジリング』。そして家庭教師が勤め先の館に何かが棲んでいると確信していく、ヘンリー・ジェイムズ原作の1961年作『回転』だ。
スティーヴン・キング原作、ジャック・ニコルソン主演の『シャイニング』も、ホテルという巨大な「家」で正気を失っていく物語と言える。11本中5本が、人が住む建物を舞台にした恐怖なのである。

悪魔、呪い、見えない襲撃者が並ぶ後半戦
一方で、より直接的に「人ならざるもの」と対峙する作品も選ばれている。筆頭は1973年の『エクソシスト』だろう。少女に取り憑いた悪魔と2人の神父の闘いを描いた本作は、実際の悪魔祓い事件に着想を得たとされ、公開から半世紀を経てもなお語り草だ。
M・R・ジェイムズの短編を下敷きにした1957年の『悪魔の夜』も入っている。米国の心理学者が悪魔崇拝のカルトを調べるうちに、合理では割り切れない世界へ足を踏み入れていく。
異彩を放つのは1982年の『エンティティー 霊体』だ。カリフォルニアの女性が姿の見えない何者かに繰り返し襲われるという凄惨な内容で、実在の怪奇事件を元にした小説が原作とされる。ほかにも、疫病と死と迷信が渦巻く1912年のバルカン戦争下を描いた1945年の『Isle of the Dead』(原題)、呪われた鏡や不気味な腹話術人形が登場する英国のオムニバス『夢の中の恐怖』、そしてヒッチコックの『サイコ』が名を連ねる。

なぜ人は「見えないもの」をこれほど恐れるのか
こうして並べると、スコセッシ監督のリストには派手な怪物がほとんどいない。恐怖の正体は、壁の向こうの物音、廊下の暗がり、誰もいないはずの部屋の気配だ。
人間の脳は、正体の分からない刺激に対して最悪の想像で空白を埋めるようにできているという説がある。暗闇に何かを「見てしまう」のは、外敵から身を守るための古い本能の名残なのかもしれない。古典ホラーの作り手たちは、その本能を誰よりも巧みに突いてきた。
もっとも、それだけで説明がつくとも限らない。古い家に住む人が「何かいる」と感じる体験談は、洋の東西を問わず今も後を絶たない。巨匠が最も恐れたのが、作り物の怪物ではなく住み慣れた家に潜む気配だったという事実は、私たちの足元にも同じ何かが息づいている可能性を、そっと示しているようにも思える。
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