【死刑囚と面会】平成生まれの死刑囚が衝撃告白 ― 実は「殺人の記憶がない」石巻3人殺傷事件

■「ビンタは3発目から暴力になると思っていた」

【死刑囚と面会】平成生まれの死刑囚が衝撃告白 ― 実は「殺人の記憶がない」石巻3人殺傷事件の画像4今年4月25日、祐太郎に対する最後の審理が行われた最高裁

「俺、A子に暴力をふるったとは思っていなかったんですよ」

 祐太郎がふいにそんなことを言ったのは、最高裁の判決が間近に迫った時期のことだ。A子さんに暴力をふるっていたことは祐太郎本人も認めていた事実だけに、すぐには意味がわかりかねたが、こういうことだった。

「当時は俺、ビンタだと1発では暴力にならないと思っていて、3発目から暴力になるという感覚だったんです。自分が子供の頃、暴力が身近にありすぎて、感覚が一般の人と違っていたんですよ」

 実は裁判では、A子さんのほうからも祐太郎に対し、殴る蹴るの暴力をふるっていたことが明らかになっている。2人はいわゆる「共依存」の関係だったようなのだが、一般の人間には理解しがたい特異な人間関係の中で起きた事件だったとも言えるかもしれない。

「子供の頃、自分が大人になって家族を持ったら、自分のような家庭には絶対したくないと考えていたんです。でも、自分の娘には、結果的に自分よりはるかに厳しい状況にしてしまって、自己嫌悪になりますね」

 祐太郎はしみじみそう言っていたが、祐太郎の娘は犯罪被害者の遺族であり、犯罪加害者の娘でもある。やがて分別がつく年齢になった時、自分に父親がいない理由について、彼女は誰からどのように教わるのだろうか。

「娘が今どんなふうになっているのか、写真だけでも見たいですよね。俺とA子、どっちに似ているだろうかと思いますよ」
 
 そんな話をしたのが、祐太郎との最後の面会だった。この20日後、最高裁は祐太郎の上告を棄却し、死刑を確定させた。その判決文はわずか3枚で、祐太郎が提出した上申書については何も触れられていなかった。
(取材・文・写真=片岡健/【死刑囚の実像】シリーズまとめ読みはコチラから)

ノンフィクションライター。全国各地で新旧様々な事件を取材している。著書に『平成監獄面会記』(サクラBooks)、編著に『桶川ストーカー殺人事件 実行犯の告白』(KATAOKA)など。同書のコミカライズ版『マンガ「獄中面会記」』(カルトコミックス、作・塚原洋一)が8月8日に発売。
Twitter:@ken_kataoka

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