>  > 情報システム暴露のスノーデンは英雄か?
教養としての神秘主義

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 本連載「教養としての神秘主義」では、大人のためのミステリー情報をお伝えしていく――


教養としての神秘主義 第13回
スノーデンとは何者なのか?

 オシャレにはとても見えないメガネに、ヤギのようなヒゲ、気の弱そうな下がり眉……エドワード・スノーデンの風貌は、いかにもギーク(geek)らしく見える。彼が秋葉原を歩いていたら、日本のアニメが好きな外国籍のITエンジニアにしか見えないだろう。このどこにでもいそうなアメリカ人の青年が2013年に巻き起こした大騒ぎは記憶に新しい。

 ハッキングとコンピューター・セキュリティの専門家として勤務していた国家安全保障局(NSA)から、情報監視やネットワーク盗聴のプロジェクトに関する文書を持ち出し暴露した彼の行為は、英雄的とも讃えられる一方で、アメリカ政府からは世紀の大犯罪者として批難された。

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画像は、『暴露: スノーデンが私に託したファイル』(新潮社)

 現在、連邦捜査局(FBI)の指名手配から逃れるためにロシアに身を寄せている彼が、なぜ、自ら危険をおかしてまで機密情報の暴露をするにいたったのか。24カ国で同時刊行された『暴露: スノーデンが私に託したファイル』(新潮社)で、その経緯が明らかにされている。著者、グレン・グリーンウォルドはスノーデンから情報提供を受けて、初めに暴露記事を書いたジャーナリストだ。香港のホテルの一室で、著者に対してスノーデンはこれまでの経歴及び「暴露」に至った理由を語っている。


■本当にギークだった、スノーデン

 彼は見た目通りのオタクであり、高校時代にインターネットにのめり込んでしまい、学校はドロップアウトしている。ギークやオタクというと、どこか反社会的なイメージがまとわりつくかもしれない。しかし、彼が当初から「反国家的」な思想の持ち主だったわけではなかった。むしろ、イラク戦争時に自ら志願して軍へと入隊したことを考えれば、元々は愛国的な青年だった、と言えるだろう(言うなれば、典型的なネトウヨだったかもしれない)。しかし、実際に戦地に赴く前に訓練中の事故によって彼は大けがを負い、除隊を余儀なくされてしまう。

 高校中退、そして、イラク戦争へ参加できなかった挫折は、NSAの機関でセキュリティやハッキングの技術を学ぶモチベーションに結びついているかもしれない。彼にはこの分野に天賦の才があった。コンピューターによって、彼は初めて母国に貢献する大きなチャンスを与えられたのだ。しかし、CIAやNSAといった機関に所属し、世界中で働くうちに彼はそのダーティーな仕事に嫌悪感を覚えていく。善だと信じていた国家に対する幻滅が、彼の胸中に別の正義感を育み、それが今回の内部告発に繋がったのである。

 こうしたスノーデンの語りを読み、プロファイリングをおこなうのであれば、そこに、かつて愛していたものに「裏切られた」という経験から、愛が憎悪へと反転する心性が認められるだろう。同じ心性は熱狂的なアイドル・ファンなどにも存在する(崇拝していた対象にスキャンダルが発覚した瞬間、猛烈なバッシングを加える、あるいは粛正に走ろうとする行動原理と同じだ)。

 また、彼はビデオ・ゲームから学んだモラルについても語っている。「ゲームの主人公というのは、えてして普通の人間ですが、大きな力を持つ巨悪に立ち向かうことになります」と語る彼の、ゲームの主人公との自己同一化は否定できない。スノーデンとの最初の接触から直接取材、そして暴露記事が公開されるまでの新聞社とのやりとりはさながらスリリングなスパイ・アクションのように記述されているのだが、そうした記述のスタイルが一層「ゲーム感覚」の印象を強めている。


■スノーデン批判は、本物のジャーナリズムではない!?

 20万ドル以上の年収を捨ててまでおこなった内部告発が、このようなメンタリティーによって行われていたことには、いささか幻滅してしまう。アメリカの保守系メディアも「彼は『名声を求めたナルシシズム』によって犯罪を引き起こした」と批判している。著者は、こうした批判に対して「ジャーナリズムの堕落だ」と反対の声を挙げている。ホンモノのジャーナリズムならば、スノーデンの行為を賞賛し、政府の情報監視を責めるべきだ、と。

 スノーデンによって公開された極秘資料の数々は、確かに恐ろしい計画を明らかにしてくれる。盗聴用のパーツを輸出される前に仕込まれた通信機器や、個人のPCに感染したマルウェア(不正を行う意図で作成されたソフトウェア)によって、個人の様々な情報がCIAやNSAに集められる。誰に電話をかけたのか、どんなWebサイトを見ているのか、さらには、メールの内容まで、気づかない間に監視の対象とされているのか…。当局は「監視の対象は、犯罪者やテロリストだけ」と言うが、現実にはほぼ無差別に監視は行われていたのだった。

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