怪談研究家がゾッとした幽霊話! 首を突き出した婆さんと、突っ込んだ婆さんと、めりこませた男!

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 そしてある時、「鏡花百物語集」(ちくま文庫)という本を読み、例の「ゾッとする瞬間」に襲われたのです。東雅夫さん編集の本書は、文豪・泉鏡花が熱心に催していた怪談会の様子を集めたアンソロジーです。中でも昭和3年の「幽霊と怪談の座談会」にて、小説家・里見弴がこんな話を披露しています。

【首をつきだした婆さん】

1.里見弴.jpg画像は、「主婦之友」昭和3年8月号より

「或る晩、私が散歩に出て、麹町の家に帰ってくる途中、或る寂しい横町の石垣の下に、折釘のように首ばかり前につン出した、白髪の婆さんが立っておりました」(「鏡花百物語集」幽霊と怪談の座談会)

 その姿をチラリと見ただけなのに、今でも思い出せるほど強く印象に残ったのだそうだ。そして彼が帰宅すると、長女の死を知らせる電報が家に届いていた……。

「死神だったでしょうね」

 そう、里見弴は語っています。

【顔をつっこんでいた婆さん】

2.泉鏡花.jpg画像は、「主婦之友」昭和3年8月号より

 さらにこの話を受け、泉鏡花は知人の芸者・花千代から聞いた怪談を思い出しています。彼女の師匠が亡くなった時、その遺族がある不思議な葉書を受け取ったのだそうです。

「御病気と承りましたので、何月何日の午後何時すぎに、お見舞いに上がりましたら、お宅の格子戸を細くあけて、痩せたお婆さんが挟まれたようにお内を覗いていて、ぐあいが悪くて、如何しても入ることができません。そのまま失礼して帰りました」

……ところが、この日付と時間とが、師匠の死んだ時刻とぴったり合っているので、どうも不思議でならないというので、見舞を出した方を探すけども、まるッきしわからなかったッて、そういうんですがね。
(引用、同上)

どうでしょう。

「折釘のように首をつきだした婆さん」と、「格子戸の隙間に顔をつっこんでいた婆さん」。

 これは、Hさんが見た「背筋をピンと伸ばし、頭を壁にめりこませた男」と似通っていませんか?

 彼らがいるところ、すぐに不幸がやってくる点も共通しています。死神あるいは疫病神……その名称はともかく、彼らはいつも顔をぐうっと前に傾け、我々の様子を窺っているのではないでしょうか。もし街中で、あるいは我が家の前で、首だけをつきだして立つ人がいたら……。

 これらの怪談を聞いてからというもの、僕はそれが怖くてたまらないのです。

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■吉田悠軌(よしだ ゆうき)
怪談サークル「とうもろこしの会」会長。怪談やオカルトを「隠された文化」として収集・研究している。著書に『放課後怪談部』。編集長を務める同人誌『怪処』ではオカルト的な場所を広く紹介。
怪処HP

・吉田会長の過去記事はコチラで読めます。

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