医学界を悩ます密造うんこ? 話題の「糞便移植」で問われるうんこの利用法とは?
しかしながら、うんこの移植はまだ研究が進んでいないこともあり、その規制についての対応は国によって差があります。イギリスではまだ規制がないため、医療機関がうんこを使えますが、アメリカでは食品医薬品局(FDA)が昨年、CDIへの治療以外には、うんこの移植を「新薬」と位置づけ、その臨床試験への適用に対し高いハードルを設定しました、カナダも似たような状況です。厳しい規制によって、うんこの移植という治療のハードルが上がってしまったため、アメリカやカナダでは医療機関でうんこを利用した臨床試験をすることがほとんどできていません。
■密造うんこ!? 自前移植に伴う危険とは?
その一方で、一般的な新薬とは違い、うんこはだれでも簡単にひねり出すことができます。さらにはネット上でうんこの移植による様々な病気の改善例や方法論の情報が広がっていることもあり、浣腸を使って自前でうんこの移植を行ってしまう人々も出てきているようです。
しかし「これは非常に危険である」と、カナダにあるグエルフ大学のエマ・アレンヴァーコー教授は取材で答えています。うんこにはもちろん病原菌や寄生虫のリスクがあり、実際に感染症や腸内出血の副作用も報告されています。また、腸内細菌と様々な病気の関係性については、最近ようやく微生物学者が解明し始めたところです。その中には癌や糖尿病に関わるものもあり、それがうんこの移植によってどのような影響が出るのかはっきりしておらず、長期間にわたるその影響もわかっていません。アレンヴァーコー教授は、「軽率にうんこの移植をするべきではない」と警鐘を鳴らします。
そのような危険なうんこの移植を減らすためには、やはり「医療機関において適切な方法で、移植するうんこが管理されなければならない」そう考えるのはマサチューセッツ工科大学のマーク・スミス教授です。スミス教授は実際に、安全に管理された移植用のうんこのサンプルを作るNPOを、他の研究者と共同設立しました。現在はCDIへの治療にしか使用できませんが、このNPOは医療機関にのみ、安全なうんこのサンプルを提供します。
さらにスミス教授は、科学雑誌ネイチャーにて、食品医薬品局に対してその取り扱いを「新薬」とするのではなく、血液や骨等の移植と同様にするべきと主張し、また、世界中の規制機関対してもその手順の取り扱い方を作り上げるべきだと提唱しました。規制のないイギリスでは、うんこを新薬のように扱うのか、はたまた一つの組織体として扱うか結論が出ず、現在も臨床試験が行われていますが、近々新しい規制を導入する予定のようです。今後は他の国でも、うんこの取り扱いの是非について論議されることでしょう。
これでもかと言うほどに、うんこうんこと連呼してまいりましたが、大便だけに、うんこの可能性はなかなか大きいようです。日本ではまだまだうんこの移植についての研究は多くないようですが、将来的には日本でもうんこの利用のガイドラインが定まり、実際に新しい治療法が運行されるかもしれませんね。
(文=杉田彬)
参照:「New Scientist」
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