不可能遊園地は可能か? 遠心力で人間を振り回すことに命を懸ける、鬼才ラスロヴィクス博士の架空絶叫マシーン

 開業30周年を迎え東京ディズニーランド、ディズニーシーの総入場者数が過去最高の3,070万人を記録した。前年度比13.8パーセント増と不況の波もどこ吹く風といった感じだ。USJに今夏オープンする「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」は総工費450億円を筆頭に、最近のアトラクションは最新の映像技術を駆使し、大規模なモノが多くなっている傾向にある。しかし、フロリダ州にある「遠心力研究所(ICR)」の研究リーダーであるラスロヴィクス博士が構想するアトラクションの数々は、まさにとんでもない事になっているのだ。この博士、「遠心力で人を振り回す事」だけに生き甲斐を感じているのである。

■1周14時間、2844席、驚異の観覧車

q1.jpg画像は「IRC公式サイト」より

 博士の本格的な実験は1970年代から始まる。ニューヨーク州にある大学のマシュー・ブランズウィック教授が「遠心力が脳を刺激し知能を上げる作用がある」という事を発見し、1976年に二人は「遠心力研究所(ICR)」を設立するに至り、物理的にその作用の正しさを検証する為に様々な遊園地のアトラクション制作を開始する。この「遠心脳プロジェクト(The Centrifuge Brain Project)」が幾多の試行錯誤の末、1991年に開発されたのがこの「高度運搬システム(HIGH ALTITUDE CONVEYANCE SYSTEM)」と名付けられたこのアトラクションである。

 画像で見ての通り、普通の観覧車のレールがイカの触手のようにグニャグニャと延びてとんでもない事になっている。このなんとも不規則なコースを1周するのに14時間かかり、「実際には初日からつまずいてしまった。退屈して眠ってしまう客がいるのです。それで降り忘れたりしたらまた14時間乗らないくてはいけない」とラスロヴィクス博士はインタビューの中で問題点を振り返っている。実際に動いている様子が下記で見る事が出来るが、その奇想天外ぶりには肝を抜かれる。

 ここまで読んだ読者は本当にこんなアトラクションが実在するのかと疑問に思うことだろう。そう、実はこれ、ラスロヴィクス博士という架空の人物がその生涯を遠心力の研究に捧げ、究極ともいえるアトラクションを生み出して行くという映像ドキュメンタリー作品なのである。ドイツのデジタルアーティスト、ティル・ノヴァクによって作られたこの6分間の映像作品は、偽(mock)のドキュメンタリー(documentary)という意味で「モキュメンタリー」と呼ばれている。

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