棺桶不要?死者が参加する世界一クリエイティブな葬儀屋がクール!
■地元のちょっとおかしな葬儀社が大活躍
ミリアムさんのような、遺体そのものを会場にデコレーションする形の葬儀は正直異様だ。
しかし、エンバーミング処理を施された遺体を安置し故人を偲ぶ形の葬儀はさほど珍しくない。特に、独裁的政治指導者、たとえば古くはレーニンや毛沢東、近いところでは金正日やウゴ・チャベスなどは有名だ。芸能人であればマリリン・モンローか。しかし、彼らの場合、遺体と参列者の間には「棺桶」という、死者と残された者を隔てる確固とした仕切りがあった。
ところが、ニューオリンズではミリアムさん同様の、死者と生者が同じ空間を共有するタイプの葬儀が過去何度か行われている。例えば、ミリアムさんに先立つ今年4月に行われた地元社交界の著名人、慈善家のミッキー・イースタリング氏の葬儀では、彼女のトレードマークである奇抜な帽子を被った彼女の亡骸をベンチに座らせ、沢山の花と彼女が愛した品々で囲んだ。
この葬儀を取り仕切ったのはシャボネット・ラバット葬儀社というニューオリンズの地元企業だ。
2012年、地元のジャズミュージシャン、ライオネル•バティスト氏の葬儀を請け負ったのが、同社がこの形の葬儀サービスを始めたキッカケらしい。なんでもライオネル氏は小粋でオシャレなことで知られており、他人に上から見られるのが大嫌いだった。しかし、通常のお葬式では棺桶に収められた故人を参列者が上から覗き込む形にならざるをえない。そこで、杖を持ったライオネル氏が街灯にもたれかかるという、故人があたかも街角で立っているような演出の葬儀を行ったのだという。
ミリアムさんと娘さんにとって、シャボネット-ラバット葬儀社のあるニューオリンズで亡くなったことは幸運だったと言えるかもしれない。これまで同社が取り仕切ってきた数々の「死者参加型葬儀」の実績が広く知られたことによって、現在、シャボネット-ラバット葬儀社には世界中から葬儀の依頼が集まるようになったという。
■世界一クリエイティブなプエルトリコの葬儀屋さん
シャボネット・ラバット葬儀社に先駆けて、故人の亡骸をディスプレイするサービスで耳目を集めていたのが、プエルトリコのマリン葬儀社だ。
この葬儀社がおそらく最初にインターネット上で話題になったのは2008年8月。エンジェル・パントーヤ・メディナという24歳の若者の葬儀を取り仕切ったことだった。
エンジェルさんは何者かの手により放たれた11発の銃弾によって死亡。プエルトリコの主都、サンファンの橋の下で、下着だけを身に付けた状態で発見された。
「自分の葬儀では立った状態のままにしてほしい」
エンジェルさんは生前、こう弟に伝えていたという。故人の意思を尊重し、葬儀の依頼を受けたマリン葬儀社は、エンジェルさんの死体に特殊なエンバーミング処理をほどこし、3日間にわたる葬儀の間、立った状態を維持させた。ニューヨークヤンキースのキャップを被りドルチェ&ガッパーナのサングラスを着けた、さながらラッパーを思い起こさせるエンジェルさんの遺体は、いくつもの花束が飾られた母親のリビングルームの隅に立ち、彼の死を悼む参列者達の訪問を受けた。
・暴漢に撃たれたデビット氏
次に、マリン葬儀社の名前がメディアに上ったのは2010年。デビッド・モラレス・コロンさんの葬儀である。その年の4月22日、デビッドさんは同じく暴漢に銃で撃たれるという不慮の死を遂げた。生前、彼は家族に「自分が死んだらありきたりの葬式はしないでほしい」と伝えていたという。
デビッドさんはオートバイの熱狂的な愛好家だった。そこでマリン葬儀社は親族に、棺桶代わりにオートバイを使う形の葬儀を提案した。エンバーミング処理をしたデビッドさんの遺体にライディングジャケットを着せ、愛車だったホンダCBR600に股がらせる形での葬儀を執り行ったのだ。前傾姿勢をとり、伯父さんから譲り受けたバイクで走っているかのようなデビッドさん。この葬儀は遺族の間で好評だったという。
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