撮影:鈴木信彦
■ストリートスナップが撮りにくい時代
ーーストリートスナップの場合、被写体の許可なく撮影するのが普通です。撮影中にトラブルになったことはありますか?
鈴木氏 ありますよ。多いときは1年に5〜6回はありました。定期的にあるわけじゃないけど、ああいうのって、重なる時は重なって起こるんですよ。そのうち、撮った人に交番に連れていかれたのは3回くらい。一番キツかったのはある女子高生を撮った時ですね。制服じゃなくて普段着姿だったから、高校生には見えなかったんです。ちょっとセクシーな感じの娘で、正面から撮ったんですよね。そうしたらすぐに腕を掴まれて「何撮ってんだよ!?」っていう感じのことを言われて。二人組だったんですよ。きっとヤンキーっぽい女の子だったんだと思います。それで渋谷駅の交番に連れて行かれて、警官の前ですごく駄々をこねられたんです。「絶対許さない」「目の前でカメラを壊せ」「お前みたいのがいるから社会が悪くなるんだ」みたいなことを口走って。あの時は本当にボロクソに言われました。でも、僕らがやってることって、許可を取ったら成立しないし、絶対に写っているっていう確証もない。それに、仮に撮影後に許可を取っても許してくれる人ってほとんどいないと思いますし。
ーー撮影する時に、うしろめたさみたいなものはありますか?
鈴木氏 ありますよ。プライバシーとか肖像権とかにうるさい時代になってきたでしょう。そういう締め付けが段々厳しくなってきているし、グレーゾーンというか、法律には触れていなくても触れているとみんなが思うようになってきているから。撮られた写真をなにか良くないことに使われるんじゃないかとか不信に思う人は多いでしょうね。相手によっては、刑事訴訟にならなくても、民事訴訟になる可能性はありますよね。撮る側は覚悟を決めて撮っているからいいんだけれど。
ーー撮影風景を見せていただいて、街を歩く人を撮影した後に必ず一礼していた鈴木さんの姿が印象に残りました。
鈴木氏 やっぱり撮らせて頂いているわけだから、相手に敬意を表しています。でも、相手が明らかに激高しているような時には逃げるしかないですよね。凄い勢いで怒鳴られたり、相手に掴まったらマズいと思った時に逃げたことはあります。僕らがやってることって、写真家じゃない人には解りにくいと思うんです。そういうこともあって、今の若い人達でストリートスナップを撮る人は少なくなっているんじゃないかな、と思うことがあります。世の中がそういう流れに持っていこうとしているから。
ーー確かに、撮りにくい時代になっていると感じます。
鈴木氏 ただ、見る側からしても、ストリートスナップって面白いと思うんですよね。そこに写っているのは実際にそこにあるものや起きていることで、作られた世界じゃない。演出された世界じゃないから。写真はもともと真実を写すというか記録のためのものだから、そういうのって面白いに決まってる。多分、撮りたい人はたくさんいると思うんですよ。実際に問題が起こらないようなら撮りたいと思っている人はいると思う。でも、状況が状況だから撮れないとか撮ったものを見せにくい傾向はあります。それは残念ですね。