撮影:鈴木信彦
■渋谷の若者からエネルギーが無くなってきている気がする
ーー鈴木さんが渋谷で写真を撮り始めた1993年から20年以上が経ちました。渋谷を行き交う若者に変化は感じますか?
鈴木氏 だんだん、ハングリーさみたいなエネルギーがなくなってきている気はします。個性も感じられなくなってきている。それは時代のせいかもしれない。社会からそいうことが許されなくなってきているのかもしれないですね。若い人達が自己主張しにくい状況があって、それで個性的な人が少なくなっているような感じはします。女の子達はみんなちょっとフェミニンで可愛らしい人達ばかりじゃないですか。それがファッションのせいなのかはわからないけれど。
ーー鈴木さんが狙っている被写体は、雰囲気のあるキレイな女性が多い印象がありますが、男性も撮っていますね。発表するさいの事情もあるのかもしれませんが、年々男性を撮った写真が少なくなってきている気がします。
鈴木氏 そうかもしれないですね。昔はギラギラした人がいましたから。遠くから見ても強いオーラみたいなものを放っている人がいたんですよね。「この人ホントにスゲーな」みたいな男性が。最近だと、ちょっと目立つのはビジュアル系っぽいファッションの人くらい。でも、そういう人達を僕は別に撮りたくない。昔は「この人はどんな仕事をしてるんだろう?」とか「社会でやっていけるのかな?」って思うような人が渋谷にはいっぱいいたんですよ。今もいるのかもしれないけれど、昔のほうが多かった。そういう人がいれば僕も撮るんだけど、なかなかいないんです。別に犯罪の匂いのする危険な感じの人を撮りたいわけではないんだけど、満たされないなにかを抱えていて、自己主張が強くて、見た目からもその人の意思みたいなものを感じられる人が今は少ない。そういう人は目つきが違うんです。渋谷だけじゃないのかもしれないけれど、今はみんな均質化しているような気がします。
ーー街の様子はどうでしたか?
鈴木氏 90年代は歩くのも怖かった印象があります。荒くれた人たちばかりだったから。そういう人って今の渋谷にはあまりいないじゃないですか。六本木にはまだいるのかな。でも、とにかく渋谷ではほとんど見ません。昔はそれこそキャッチとかスカウトマンとかがいて、あの人達にも縄張りがあって、それを侵すと怖かった。今はあまり見かけないし、いてもせいぜいクラブとか居酒屋の呼び込みくらいでしょう。あの人達は怖くない。昔の渋谷はそういう怖い人達がいて撮りにくい場所だったんですよ。TSUTAYAの前とか結構怖そうな人達がいて、カメラを持ってウロウロしていると「ココで撮るのは頼むから止めてくんない?」とかって言ってきたんですよ。今はそんなことはないですからね。どこにでもカメラを持って入って行ける感じだから。