撮影:鈴木信彦
ーー当初は渋谷をモノクロで撮っていた鈴木さんが、どうしてカラーに切り替えたんですか?
鈴木氏 ずっとモノクロでやっていこうと思いながらも、カラーで撮りたいという想いも少しはあったんです。その頃、一緒に撮っていた友人の写真家がいて、彼は僕より先にカラーで街を撮っていたんだけれど、彼に写真を見せてもらったら、凄くいいイメージだったんですね。今僕が撮っている写真とすごく重なっていたんです。で、自分のなかに凄く嫉妬があったんですよ。嫉妬はあるんだけれど、でも、本当にいい写真だから僕自身も見たいし応援してしまう。自分が撮りたくても撮れないものを撮ってきてくれるから、悔しいけれど見たいんですよね。自分が写真を撮って行く上でのバネにもなるでしょう。それで彼に「また田村(彰英)さんが選者をやるからコンテストに出したほうがいいよ」ってアドバイスしたんですよ。そうしたら、彼の写真は毎月のように入選。なんか悔しくなっちゃって、僕も出したいと思ってカラーに変えて応募したんです。それから何回か入選したんですよね。そうこうしているうちにカラーで撮ることが面白くなっちゃったんですよ。カラー写真って生々しいじゃないですか。時代的にもモノクロよりリアリティがあるんじゃないかと思って。それからカラーでずっと撮っているんです。
ーーいわばライバルだった写真家の後からカラーで渋谷を撮り始めるということに、ためらいのようなものはなかったんですか?
鈴木氏 単純にカラーのほうが好きになっちゃったから。なんかこう、気持ちにくるんですよね。心の琴線に触れるっていうんじゃないんだけど。