墓のない国 ― タイの葬送風景に見る死生観と輪廻転生
■親思いのタイ人
タイ人は両親から非常にかわいがられて育てられることもあり、親をとても大切にする。妻によると、父親から怒られたことがなく、常に優しい人だったという。その大好きな父が亡くなっても葬儀に参列できなかったことが、妻にとっては大きな心残りとなっているようで、今秋には二人の子供を連れて帰国して墓参り…ではなく「寺参り」をしたいと言っている。このように親子の良好な関係が死後も続くのがタイという国だ。
さて、日本人と結婚した筆者の妻は、死後に土葬されることを希望するだろうかと、本人に聞いてみた。すると、当初は「遺骨はタイへ送って」と言っていた妻が、日本の習慣に倣って土葬されるのも場合によっては構わないと言う。たとえ夫婦で埋葬方法が異なるとしても、死後に夫婦一緒になれないというわけではないだろうが……。
筆者はといえば、死んだ後に“魂の抜け殻”となってしまった遺骨への執着はなく、タイ式に散骨してもらうのも良いのではないかと思っている。
今回紹介したタイの葬送風景が、読者にとって「生とは、死とは何か?」を考える際の役に立てば幸いだ。
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