【臨界事故ミステリー】悪魔の球体デーモン・コアの目覚め ― 1人の学者がプルトニウム塊にブロックを積んだその時…
石川翠のワールド・ミステリー スペシャル・シリーズ 全2回:復讐か、呪いか? 悪魔の球体デーモン・コアのミステリー【前編:物理学者ハリー・ダリアンの実験】
いまから69年前の1945年8月6日、そして9日─。アメリカ合衆国は、広島と長崎に史上唯一の対都市無差別原子核爆弾攻撃を敢行した。広島にはリトルボーイ(Little Boy)が、長崎にはファットマン(Fat Man)が投下された。
それぞれ史上2番目と3番目の原爆で、計21万人以上にも及ぶ無辜の命を奪ったこの惨劇は、今日、「大量虐殺の世紀20世紀」の最もモニュメンタルなシンボルとしてわたしたちの胸中深くに刻まれている。
原爆投下後の8月15日、ポツダム宣言をやむなく受諾した日本は連合軍に降伏し、15年もの長きに渡る、アジア・太平洋戦争はようやく終結した。
それから1週間ほどした21日、アメリカでは、ニューメキシコ州のロス・アラモス国立研究所(Los Alamos National Laboratory)で、ある実験のさなか、身の毛もよだつ恐ろしい事故が発生した。同所は、世界に先駆けて原爆の運用をめざした「マンハッタン計画」の総本山だ。国内ではなぜか口の端にのぼらない、奇妙な臨界事故についてご報告したい。
●ちょっとおさらい~プルトニウムとはなにか?
でもその前に、プルトニウムについて簡単におさらいをしておこう。この事件の意味を、しっかりと味わうためにも。
さて読者は、「デーモン・コア」(Demon core)という球体をご存じだろうか? この通称「悪魔のコア」は、実験用にロス・アラモス国立研究所がつくり出した、約14ポンド(6.2kg)のプルトニウム(Plutonium)の球のことだ。ソフト・ボールほどの大きさで、決してお勧めできないが、素手でふれると「放射能の温かみ」が感じられるという。
プルトニウムは銀白色で、「原子番号94、元素記号Pu」。とても重たい金属で、原子爆弾や、MOX燃料などに使われる。というか、それ以外には使い道がないのが実情のようだ。えっ? なら、砲丸投げに使えるじゃないかって?いやぁ、ちょっとねぇ…。
ウラン鉱石などにごく微量含まれるが、人類が手にしたプルトニウムはもっぱら、原子炉内で燃えたウランが、中性子を吸収後、ベータ崩壊をへてできたものだ。
プルトニウムとは、原発を稼働させると、つまりウランを燃やすと、いやでもできてしまう困ったクンなのだ。強い放射能を持ち、半減期も最大2万4,000年と、地質学的年代風に長い。いや、長すぎる。その名は冥王星(Pluto)に由来するプルトニウムだが、大半はプルトニウム239として存在し、必ず少量のプルトニウム240を含んでいる。
●プルトニウムと臨界
プルトニウム239とウラン235は、「連鎖的核分裂反応」を起こす、きわめて危険な物質として知られている。この2つはある濃度、ある分量、ある形になると、ひとりでに、連鎖的な核分裂をはじめる性質があり、だからこそ、核爆弾や原子炉の燃料になるのだ。
現在明らかになっている臨界量(核分裂が自動的にはじまるだけの金属の量)は、ウラン235が46.5キロ、プルトニウム239なら10.1キロ。一度、臨界状態になれば、大量の中性子が飛び出し、近くにいる人間は確実に死亡する。またヨウ素131やセシウム137、ストロンチウム90といった核分裂生成物が、あたりに大量にばらまかれてしまう。
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2024.10.02 20:00心霊【臨界事故ミステリー】悪魔の球体デーモン・コアの目覚め ― 1人の学者がプルトニウム塊にブロックを積んだその時…のページです。石川翠、デーモン・コア、ハリー・ダリアン、臨界、被曝などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで