エボラのワクチン開発不要論! “無症候者”の免疫システム研究がカギ?(医学論文)

エボラのワクチン開発不要論! 無症候者の免疫システム研究がカギ?(医学論文)の画像1画像は、Flickrより。 Credit: NIAID

 エボラ出血熱の感染者数が遂に1万人を越えた(10月25日、WHO調べ)。死者数は4,922人で、現在のところ致死率は約50%ということになる。今回の感染拡大の収束に時間がかかれば、今後は感染者、死者数の増加と共に致死率の上昇も予想されかねない。多数の犠牲者を出して猛威をふるう今回のエボラ流行だが、現地で医療作業中に感染したものの見事に回復して再び医療活動に復帰する看護師の“復活劇”が注目を集めている。


■再び活躍するエボラ熱“生還者”たち

 そのうちの1人は、今年8月、西アフリカのシエラレオネで、医療作業中にエボラ出血熱に感染し、母国のイギリスに移送されて治療を受けていたイギリス人看護師、ウィリアム・プーリー氏(29歳)だ。彼は、入院後に見事に回復を遂げた後、医療活動を再開するため再びシエラレオネに戻ったという勇敢な看護師だ。

 8月23日に病院に搬送され、9月3日に退院したというプーリー氏だが、治療には未承認の治療薬「ジーマップ(ZMapp)」が投与されたことがその後の病院の発表で判明している。プーリー氏は「免疫ができた自分こそが医療活動を行なうべきであり、特に状況が深刻なシエラレオネに戻るのが適切だと考えた」と、英「Guardian」紙の取材に応えている。

 また、米「Bloomberg」が10月22日に伝えたところによれば、同じくエボラ出血熱から回復を遂げたアミー・スバーさんは現在、「国境なき医師団」と共にリベリア共和国の首都モンロビアの病院でエボラ患者に食事や薬剤を提供したり、子どもたちのおむつを交換したりする医療活動に従事しているという。

 ここにはスバーさんのように、エボラ出血熱から回復した元患者が11人勤務していて、免疫のある彼らは防護服は着用せずに手術服にマスク、手袋、長靴といった軽装備で患者の世話をしているということだ。軽装備での医療活動については賛否両輪があるものの、現在のところ再感染した者はいない。「国境なき医師団」のアテナ・ビスクージ氏は「彼らに一生免疫があるかどうかはわからないが、少なくとも今回のエボラ流行の間に再び感染することはないだろう」と取材に応えている。


■“生還者”よりも“無症候者”がカギを握る!?

 感染から発症、そして闘病の末に回復を遂げ、エボラに対する免疫を獲得した彼らのような“生還者”がいる一方で現在、エボラに感染していながら何の症状も引き起こさない“無症候者(asymptomatic)”が実は相当数いることがわかりつつある。

 1996年のガボン共和国でのエボラ流行の際、感染地域の多くの人々の血液が研究者によって検査されたが、エボラの陽性反応が出た者の実に71%が病状のない無症候者であったという。また2000年に発表された研究論文によれば、感染地域で看護などによりエボラ患者に接触した者の46%は陽性でありながら無症候であったということだ。

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