小保方晴子氏は被害者か? 科学ライター寄稿「無視できぬプライミング効果と4つの推論」
とうとう結論が出てしまった。小保方晴子氏自身による検証実験が失敗、STAP細胞は事実上存在しないと理化学研究所が発表したのだ。
小保方さんが小保方さんでなければ、今回のような騒動は起きなかっただろう。小保方晴子氏が男好きのする、ちょっととぼけたカマトトっぽい女の子だったことが、すべての間違いだったのだ。
世紀の大発見をした、割烹着の天才美少女。しかしその実験は誰も再現できなかった。名誉欲に駆られた詐欺か? 国家的研究機関のメンツが丸つぶれの実験ミスか? 再生医療市場をめぐる謀略か? 学会の俊英との不倫疑惑とその自殺、共同研究者の不審な動き、冷蔵庫に隠されていた出自不明のES細胞、そして泣きながら叫んだ「STAP細胞はあります!」
面白すぎる。2時間ドラマの世界だ。雑な女とインテリの色ボケと自己顕示欲が引き起こしたねつ造事件で済ませるには、あまりに惜しい。
■自家蛍光を誤認していた? 推論1
STAP細胞は、細胞を希塩酸などの弱酸性溶液に漬けるだけで、分化していた細胞がリセットされ、分化前の万能細胞に変わるとしたもの。細胞には万能性を獲得すると蛍光する遺伝子を組み込んでおき、万能細胞に変わったかどうかは、細胞の蛍光で確認する。
これは科学の常識からすると、滅茶苦茶な話だ。極端な話、胃の立場はどうなる? である。酸で万能細胞が生まれるなら、胃酸で胃袋が万能細胞になるのか? 胃から人間ができちゃったりする? 映画の富江? それぐらいありえない話であり、だからネイチャーも「生物学の常識を覆す」とコメントしたわけだ。
理化学研究所が行った検証実験でも、細胞の蛍光はわずかながら確認された。ただし本当に万能細胞であれば、それを受精卵に組み込み、その細胞を取り込んだ形で胎児が成長しなければならない。それはまったく確認できず(1600回以上、マウスを使ったという)、万能性は認められなかった。
そうであるなら、この騒ぎは何だったのか? 小保方さんたちが名誉欲あるいは予算獲得のためにSTAP細胞をでっち上げたのか、それとも研究者としてあるまじきミスをしていたのか?
細胞には自家蛍光という現象がある。構造的に細胞が光を放出することがあり(細胞が死ぬ時に特に強く蛍光するという)、不慣れな研究者は蛍光遺伝子の光と間違えることがよくあるのだそうだ。
小保方さんは記者会見で細胞の作製に200回以上成功したと言い切っていた。彼女が天才的なウソつきでなければ(本物のウソつきを普通の人は見抜くことはできないので、これはなんとも言えない)、9割9分、自家蛍光を見間違えたのだと思われる。彼女は研究者として未熟であり、かつSTAP細胞の存在をまったく疑っていなかった。そのために自家蛍光を蛍光遺伝子の蛍光と無意識に誤認するバイアスがかかっていた……、だとしたら、周囲はその誤認の可能性に気がつくべきだっただろう。
■細胞のすり替えの可能性 推論2
小保方さんたちがSTAP細胞ができたと考えたのは、マウスでの万能細胞の確認を考え合わせると納得できる。小保方さんたちが行った最初の実験では、蛍光遺伝子が組み込まれたマウスの受精卵ができている。…ということは、それは自家蛍光ではなく、万能細胞=STAP細胞ができた証拠だ。彼女たちは自家蛍光を万能細胞の蛍光と誤認したのではなく、それが自家蛍光のはずがなかったのだ、受精卵の細胞が光ったのだから。万能細胞でなければ、それは起こらない。
ではなぜ検証実験では万能細胞はできなかったのか? そこで冷蔵庫にあったというES細胞が問題になる。
もしかしたら、だ。小保方さんらの実験結果の誤認でも、ねつ造を行ったわけでもなかったとしたら……もしかしたら、小保方さんらが知らないところで、細胞のすり替えがあったのだとしたら?
研究母体となった理化学研究所は、現在の財団法人から新設される特定国立研究開発法人への格上げが予定されていた。併せて、国からの予算も増額されるため、理化学研究所は増額する予算の名目付けを文科省から要求されていた。
官公庁では予算を多く獲ることが評価対象になる。予算を勝ち取りたかった文科省は、特定国立研究開発法人を正当化する根拠が必要だった。そこで理化学研究所は、不確実な代物だと知っていながら、次の研究の柱としてSTAP細胞を持ち出したのではないか?
理化学研究所の政治的な部分にコミットする大人たちが、検証が不十分なことを知りながら、政治的な理由で小保方さんを祭り上げる必要があった。しかし思うような成果が上がらない。予算編成の時期は刻一刻と迫ってくる。そして結果を出す必要性に迫られた誰かが、ひそかに細胞のすり替えを行う。当然、データのつじつまが合わなくなる。そのため、小保方さんらは前段階の実験が間違っていると考え、結果に合わせてデータの改ざんを行った……。
■仮にもしもSTAP細胞が本物だったとしたら? 推論3
さらにエキセントリックな可能性を考えてみる。もし本当にSTAP細胞ができていたとしたら? ごくわずかな実験手順の違いが原因で追試は失敗したのであり、小保方さんが作ったという200個のSTAP細胞が本物だったら?
ひとつは小保方さんが偽のデータを開示している可能性だ。再生医療市場は2050年には15兆円に達すると言われている。STAP細胞が本当であれば、そこから生み出される利益は想像を絶する。
研究には詳細な実験ノートを作成するのが常識であり、義務でもあるが、小保方氏の実験ノートはデータも実験日時も記載されておらず、プロの研究者としてはありえないレベルの稚拙なものだった。あのノートが記録のすべてだったとしたらお粗末だが、もし詳細な実験手順が記された裏ノートがあったとしたら? 自分を守るために、そのノートを隠していたとしたら?
今回の騒動により、小保方さんは博士号もはく奪された。そんなキャリアも資格も何もない彼女が、もし海外の研究機関へ移ったとしたら、裏ノートがある可能性が高い。再生医療に革命を起こす細胞の技術は、海外に売り渡されるわけだ。
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2024.10.02 20:00心霊小保方晴子氏は被害者か? 科学ライター寄稿「無視できぬプライミング効果と4つの推論」のページです。STAP細胞、小保方、川口友万、プライミング効果などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで