メカニズムは不明!? 量子テレポーテーションの世界最長記録更新!

■改めて「量子テレポーテーション」とは?

quantumteleport2.JPGJPL」のHPより

 筆者を含めて混乱しやすい点ではあるが、今回の実験はある情報が25kmの距離を光ファイバーを経由して瞬間的に送られたということではなく、本来はもつれあっている2つの量子を切り離し光ファイバーで伝送し25kmもの間隔で引き離すことに成功したということである。

 以前のトカナの記事では、量子テレポーテーションを超超々(!?)単純化して説明したが、ポイントとなるのは「量子もつれ(quantum entanglement)」である。

 量子もつれ状態にある2つの量子は、離れ離れになったとしてもお互いに密接に繋がっており、一方に及ぼした作用がすぐさま他方にも現れるのだ。

 この働きを利用して一方の量子に情報を渡すと、瞬時に片割れの量子にその情報が伝わることから、新たな情報伝達手段になると期待されているのだ。

 しかし、なぜ量子もつれ状態にある2つの量子にそのような超能力マジックのような芸当ができるのか……。驚くべきことに、このメカニズムはまだよくわかっていないのだ。ひょっとすると最先端の天才的物理学者の中には分かっている人がいるのかもしれないが、現状ではまだ科学的に納得できる説明はなされていない。

 まさに“ブラックボックス”のようなこの量子もつれ状態だが、その一方で今回の実験を含めてこの働きを利用した技術はどんどん開発されてきている。あと30年ほどで量子コンピュータが実用化されるという話もあれば、それに続いて量子コンピュータ・ネットワークもすぐに構築されるともいわれている。

 全容がよくわからないままある現象を利用するという点では、この量子テレポーションは原始時代の人類にとっての“火”に似ているのかもしれない。

 もちろん現在、人間にとって火はかなりの程度コントール可能なものになっているが、それでもまだ火事がなくなっていないのも事実だ。量子の不可解な働き知れば知るほど一抹の不気味さも覚えるが、まったく予断を許さない「量子技術 (quantum technology) 」の分野で今後どのような展開が起こり得るのか興味は尽きない。

参考:「Daily Mail」、「Live Science」、「JPL」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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