死刑囚・小泉毅が相対性理論の矛盾を指摘した論文 ― 物理学者が見解を語る

小泉からの伝言

「論文についてですが、特殊相対論は既に多くの人たちによって、何度も検証され、正しいことが実証されているので、物理学に詳しい人(大学の先生等)に“特殊相対論の修正”と言えば、間違いなく笑われ、取り合ってもらえないと思います。しかし、過去に以下の実験を精密かつ厳密に行ったことがあるのでしょうか?

“異なる慣性系にいる2人の観測者が互いに相手の速度を測定し、比較する実験”

 今の特殊相対論では、この実験を行えば、2人の観測者が測定した速度の絶対値は必ず、完全に一致しなければなりません! これは本当なのでしょうか? 私は、この検証実験は特殊相対論の検証の盲点だと思っています。論文の10ページ目に計算例を載せましたが、ある条件下で計算しますと、一方が相手の速度を30m/sと測定した時、他方は相手の速度を30.000000003m/sと測定することになり、ほんのわずかですが、速度に違いがでます」

(…中略…)

 とにかく、上記の実験を行い、速度がほんのわずかでも違えば、この実験を行った先生はそれだけで“ノーベル賞”をとれると思います。それほど、この実験は価値がある実験なのです! なぜなら、速度が一致しないということは、現代物理学の常識を根底から覆し、現代物理学に革命的衝撃をもたらすことになるからです!

 それに、私の言っていることが正しければ、片岡さん自身も、私の事件よりもはるかに大きい、人類の歴史に残る実験の証人になるわけですから、これほどライターみょうりに尽きることはないと思いますよ。ただし、この実験は極めて高い精度が要求される、非常に難しい実験であり、更に時間とお金も掛かると思います」


 筆者は過去、有名無名の様々な犯罪者や冤罪被害者、その関係者を取材してきた。その中に「このネタはすごいスクープになりますよ」とか「このことを書いたら、一気に業界で名が上がりますよ」などと世話を焼いてくれようとする人は色々いたものだ。だが、「ノーベル賞」が云々というほど壮大な提案をされたのはライター人生でも初めてだった。たしかにあの高名なアインシュタインの超有名な理論を覆す論文の正しさが実証できたら、その科学者はノーベル賞をとってもおかしくないだろう。

 だが、筆者は日々の生活にかまけ、この小泉の好意を無にし続けていた。小泉が今年6月に最高裁に上告を棄却されて死刑確定し、面会や手紙のやりとりができなくなって以降、このような論文を見せてもらったことさえ、正直忘れかけていた。振り返れば、この5月20日付けでもらった手紙は1年余り取材させてくれた小泉が最後にくれた手紙だった・・・・・・。そして今、そんな経緯への反省と淡い期待感から、筆者はこの小泉の論文を有識者に見てもらい、意見を聞いてみることにした。

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