7月に今世紀最後のヒッピーの大祭典! “グレイトフル・デッド”の魅力をデッドヘッズのSHIN氏に聞いた


■サンフランシスコではマリファナを吸ってもお咎めなし!?

7月に今世紀最後のヒッピーの大祭典! グレイトフル・デッドの魅力をデッドヘッズのSHIN氏に聞いたの画像7会場の周りは、大勢の人々がたむろするが、各々が好きなように楽しんでいるため、混んでいて窮屈だと感じることはないとか。写真を見ても分かる通り、金髪のドレッドヘアーの男性がマリファナを吸っているが、その右斜め上のタイダイTシャツのボブ・マーリーもマリファナを吸っている、偶然を撮らえたミラクルショット!!

――ヒッピーといえばマリファナやドラッグを嗜むというイメージがありますが、実際のところはどうなんですか?

SHIN 今がどうかは分からないけど。アメリカで生活していた時は、ネイティブアメリカンスピリットと同様に、巻きタバコの一つとしてマリファナがありました。別にそれを学生がスターバックスで巻いていたって、警察は何も言ってきやしない、それがサンフランシスコ。

 僕はただマリファナを求めていた、ハイになりたかったというわけではない。ヒッピーと友達になって、巻きタバコをもらった時に、マリファナが入っていたり、入っていなかったりしただけ。だから、ハイになっているかどうかの境目はない。いうなれば、お茶菓子のように差し出される物を、別に断る理由もないという感じですかね。

 今ではマリファナは、アメリカの西海岸や一部の国では治療薬として使われているそうです。だからといって、あえて俺はそれが良いことだと言いたいわけではない。自分は賛成派でも反対派でもなく、サンフランシスコの文化とともに自然にあっただけのこと。デッドヘッズの中に吸ってる人は大勢いたけど、中にはノンドラッグ・ノンアルコールのデッドヘッズもいて、僕はどちらかというとそのタイプ。つまり、マリファナやドラッグを嗜んだからといって、ヒッピーだというわけではないんです。

■人のあら探しをしている位なら物を作ろう

7月に今世紀最後のヒッピーの大祭典! グレイトフル・デッドの魅力をデッドヘッズのSHIN氏に聞いたの画像8数日間、続くショーの汚れを落とすため、設置されていたフリーシャワー前の写真。真ん中にいるパッチワークの少女が指を上げて、“I need miracle(フリーチケット下さい)”とチケットを探している

――ヒッピーたちは、何をもってヒッピーと言うのでしょうか?

SHIN 自分の見たものや考えを頭の中で組み合わせて、浮かんだアイデアを形にできるかが重要。デッドヘッズはみんなアイデアマンだった。たとえば、破れた服にそこらにあった花柄の端切れで直したらおしゃれになったなど、偶然やったことが絵になるのがヒッピーなんですよ。

――海外で見かけるヒッピーというと、危険で近づきがたい雰囲気がありますが、彼らはどのようなことを考えて生きているんですか?
 
SHIN アメリカに住んでいるデッドヘッズの場合は、皆ピースフルですね。それは70年代の流れのソウルとスピリットとラブアンドピースの精神を汲んでいるからです。思考的には四角いスクエア(型にハマった仕組みや固定観念)ではなく、丸くて決まりがない柔軟な発想と行動をするのが特徴的で。法律や決まりがない、かといって、自分で自分自身の責任を負うことも少ない。その代わりにもし誰かが困った時には周りの人が助けてくれるという、暗黙のルールのようなものが、サンフランシスコ全体にあるんです。

 たとえばラスベガスとかで知り合った人に、遠く離れたところサンフランシスコの路上などで偶然出くわすとか。しかも、お互いが出会うことを事前に予感している。だけど、デッドヘッズたちの場合は、すべて暗黙の了解。というのも、デッドのショーについて回っていると、普段から奇跡的な出来事があまりに多く起きるからなんです。 また、ヒッピー同士ではお互いにテレパシーのようなものを感じていて。あまり口に出しませんが、「I’m just thinking about you(今あなたのことをちょうど考えてた)」と挨拶する時がたまにありますね。

 生き方としては、「将来どうしよう」なんて考える暇もなく、一つの道として道路が敷かれているところを、自分はただ歩いているだけ。それも楽しみながら。時々、怖い気持ちになることもあるけれど、最終的には解決していく。

 ほかにも「誰かに呼ばれている」と感じて辿り着いた先がデッドだったという人も沢山います。

 あとは「I need miracle(タダでデッドショーのチケットをください)」という言葉もある。デッドヘッズは「Miracle me(奇跡よ起これ)」と若い女の子が自分の身体にペイントしているんです。これらの意味は「すべての出来事は奇跡が生んでいる。それは必然であり、そう感じているのがデッドヘッズである」ということ。

7月に今世紀最後のヒッピーの大祭典! グレイトフル・デッドの魅力をデッドヘッズのSHIN氏に聞いたの画像9オレゴン州にて。ドレッドも美しいかなりオシャレな少女が腰に“miracle me”と書き、人差し指を上げてチケットを探しているところ

 僕が彼らから感じたのは、最も原始人に近いということ。地球と宇宙と自分がつながってるという感覚があり、地上とともに生きてるんだ。そういうありがたさを皆が感じているから、争いやねたみは一切起こらない。日本では人のあら探しをするのが文化になっているけど、そんなことををしている暇があったら、自分の破れた服を端切れで直してもっと格好良くしたり、ワーゲンにサイケな絵やメッセージを描いたり、次のショーでトレードするための物を作ることに時間を費やすのがデッドヘッズ流の生き方です。(中編につづく)

※中編はこちら(4月25日 12時から配信) http://tocana.jp/2015/04/post_6256.html
 後編はこちら(4月26日 12時から配信) http://tocana.jp/2015/04/post_6259.html

(取材・文=Yousuke Koizumi 写真=SHIN)

■SHIN
90年代にアメリカでデッドヘッズとしてショーを巡り、その後、セレクトショップ「MOONSTRUCK」をオープン。多くの人々にデッドマインドを説き、日本におけるヒッピーファッション・文化を築いた。

■MOONSTRUCK
PEACE&LOVEなヒッピースタイルをテーマに、オリジナルからハンドメイドものまで、個性的でメッセージあふれるアイテムを扱うお店。レアなグレイトフル・デッドのアイテムも販売。
オフィシャルサイト http://www.moon-struck.com/

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