エジプトで頻発する「聖母出現事件」の謎とは?

 聖母の出現は、明け方に見られることもあったが、ほとんどは夜間に発生した。ある時は上半身だけ実体化することもあり、イエスらしき幼子を抱いた姿で現れることもあった。また、天使や聖人らしき別の人影を伴っていることもあれば、光り輝く鳩のような飛行物体や光る雲が同時に、あるいは単独で現れたり、芳しい香りが周囲に立ち込めることもあった。そして大観衆の中には、聖母を目撃した瞬間に長年患っていた難病が治癒したという者も大勢現れた。1968年4月30日には、午前2時45分頃から5時頃まで、2時間以上にわたって出現が続いたという。聖母の出現や奇妙な発光物体の目撃という事例は、3年以上の期間、1971年5月まで続いた。目撃者の総数は何百万人とも言われ、まさに史上最大の聖母事件である。

 エジプトでの聖母事件はこれだけではない。1986年3月25日には、カイロ市内のショブラ地区に聖母マリアが姿を現し、やはりその姿が大勢のカイロ市民に目撃されている。さらに、2000年8月にはエジプト中央部のアシュート、そして2009年12月11日からは、ほぼ1カ月間、カイロ市の対岸にあるワラークにやはり聖母が現れた。


■実はエジプトに来ていた! イエスと両親

 これらエジプトの聖母事件には、いずれも共通した特徴が見られる。聖母の出現が夜間に発生していること、聖母マリアの姿が光り輝く人型をしていること、そして何よりも、現場に集まった不特定多数の民衆にその姿が目撃されていることである。

 ここで読者の皆さんは疑問に思うかもしれない。エジプトといえばアラブ諸国のひとつであり、国民はイスラム教を信じているはずだ。そんな国で、どうして史上最大の聖母事件が発生したのだろうか。

エジプトで頻発する「聖母出現事件」の謎とは?の画像3コプト教徒 「Wikipedia」より

 実はエジプトには、「コプト教徒」と呼ばれるキリスト教徒たちが住んでいる。そして上述の聖母事件はいずれも、このコプト教の教会で発生している。さらに、聖母マリアはイスラム教においても預言者イエスの母であり、女性預言者として尊敬を集めているのだ。

 そしてもうひとつ、エジプトという国と聖家族との重要な関係も指摘しなければならない。

『マタイによる福音書』には、マリアの夫であるヨセフの夢の中に天使が現れ、次のように告げたと記されている。

「起きて、子どもとその母親を連れて、エジプトに逃げ、わたしが告げるまで、そこにとどまっていなさい」

 当時パレスチナの王であったヘロデが、新しく生まれた救世主(イエス)に自分の地位が脅かされることを恐れ、ベツレヘムに住む当時2歳以下の男児をすべて殺そうとしたのだ。そこで聖家族はエジプトへと逃れ、ヘロデが死ぬまでそこにとどまった。

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