机に向かったまま“白骨化”した貴族 ― 廃墟となった館に眠る200年越しの恐怖と悲劇【英国心霊譚】

イングランドで最も美しい村の一つとして知られる、コッツウォルズ地方。その片隅に、英国で最も呪われていると噂される村と、その恐怖の象徴である、一つの廃墟が存在する。「ミンスター・ラヴェル・ホール」。かつては栄華を誇ったこの荘園の地下で発見されたのは、机に向かい、ペンを握ったまま白骨化した、一人の貴族の骸骨だった。
秘密の部屋で発見された200年越しの骸骨
1708年、ミンスター・ラヴェル・ホールで改修工事を行っていた作業員たちは、偶然にも、壁の向こうに隠された秘密の部屋を発見した。そして、その中で信じがたい光景を目にする。
部屋の中央にはテーブルが置かれ、椅子に腰掛けたまま、完全に白骨化した男の骸骨があった。テーブルの上には本や紙、ペンが散らばり、足元には、同じく白骨化した犬が寄り添っていた。まるで、書き物をしている最中に、時が止まってしまったかのようだ。
この骸骨の主は、15世紀のこの館の主、フランシス・ラヴェルであったことが、後に判明する。
敗戦の将、自らを地下牢へ―忠実な召使いの“裏切り”
フランシス・ラヴェルは、薔薇戦争のさなか、国王リチャード3世の側近として権勢を誇った。しかし、1485年の「ボズワースの戦い」でリチャード3世が敗死すると、彼の運命は暗転する。謀反人として追われる身となった彼は、自らの居城であるこの館の、秘密の地下室へと身を隠したのだ。
部屋の場所を知り、唯一の鍵を持っていたのは、彼が最も信頼する、一人の忠実な召使いだけだった。しかし、その召使いが、不慮の死を遂げたのか、あるいは裏切ったのか。フランシスに食料を届ける者はいなくなり、彼は愛犬と共に、誰にも知られることなく、暗い地下室で餓死したのである。
発見された時、彼は200年以上もの間、机に向かったまま、誰にも見つけてもらえない孤独な死の時間を過ごしていたのだった。

かくれんぼの悲劇―消えた花嫁の伝説
この館の悲劇は、フランシスの孤独死だけでは終わらない。それ以前にも、この館では、もう一つの恐ろしい出来事が起きていたと伝えられている。
15世紀、この館の主であったウィリアム・ラヴェルの結婚式の夜のこと。祝宴のさなか、花嫁は客たちと「かくれんぼ」を始めた。しかし、隠れた花嫁は、いつまで経っても見つからない。その夜以来、彼女の姿を見た者は、誰もいなかったという。
そして、数年の歳月が流れた後。一人の召使いが、館の古い食料貯蔵庫の箱の中から、ウェディングドレスをまとったまま完全に白骨化した若い女性の遺体を発見した。花嫁は、かくれんぼの最中にその箱に隠れ、蓋が閉まって出られなくなり、誰にも気づかれずに息絶えたのだ。

今もなお、館をさまよう亡霊たち
フランシス・ラヴェルとその愛犬、そして悲劇の花嫁。彼らの満たされぬ魂は、今もなお、廃墟となったこの館をさまよっていると、地元では固く信じられている。
実際に、この館を訪れた人々からは、「奇妙な雰囲気を感じた」「白い人魂のようなものを写真に撮ってしまった」といった、心霊体験の報告が後を絶たない。
美しいコッツウォルズの片田舎に佇む、呪われた館。その崩れかけた壁は、権力争いに敗れた男の無念と、若くして命を落とした花嫁の悲しみを、500年以上の時を超えて、今に伝えている。
参考:Express.co.uk、ほか
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2024.10.02 20:00心霊机に向かったまま“白骨化”した貴族 ― 廃墟となった館に眠る200年越しの恐怖と悲劇【英国心霊譚】のページです。心霊、白骨化、イングランド、貴族、花嫁などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで