もしも月の位置にほかの太陽系惑星があったら? ~ため息が出るほど美しい太陽系の旅~
これは、地球から約38万4400km離れたところにある月の位置に、ほかの惑星があったら、地球からはどれくらいの大きさに見えるかをシミュレーションした、実に興味深い動画だ。
■100万分の1ミニチュアでわかる宇宙の大きさ
さっきの動画は月の位置に「実物大」の惑星を置いたときにどう見えるかをシミュレーションしたものだが、今度はもっと身近なものと比較できるように100万分の1に縮小して東京の街に並べてみよう。
さぁ、目をつむって想像してみよう。太陽系の惑星を100万分の1に縮小し、東京の風景の中に置いてみよう。あくまでもこれは想像だ。地球の模型があると思えばいい。東京上野公園に西郷隆盛の銅像がある。足の先から頭のてっぺんまで3.7m。まずはその真横に地球のミニチュア模型をおいてみよう(あくまでも想像だ)。
100万分の1に縮小すると地球の大きさは12.75mになる。もしこういう模型が置いてあったら、たいていの人はまず自分の家を探すだろう。現実世界で1kmの長さのものが、このミニチュアでは1mmに縮小されている。ルーペで見ると道路くらいはかろうじてわかるかもしれない。
地球は全体的に滑らかな球体だ。富士山(標高3776m)は約3.8mmでしかない。世界の屋根と言われるエベレストもたかだか9mm弱でしかない。命がけで登っている人には悪いが、ずいぶんショボイ山だ。一方、海の深さもほとんどの場所では1mmくらいしかない。太平洋やインド洋は薄い水の膜がはっているようなものだ。マリアナ海溝では1cmくらいの深さになるが、それでも大した深さではない。
今から6500万年前、直径が10kmもの隕石が落下して恐竜が絶滅したと言われている。隕石が落下したメキシコのユカタン半島には、今でも丸い形の重力異常があって「チチュルブクレーター」と呼ばれている。その10kmの「巨大隕石」は、ミニチュア地球ではたったの1cmだ。直径13m弱の地球にわずか1cmのアメ玉くらいの隕石が落ちてきたわけだ。速さは秒速数十キロというから、ミニチュア地球では秒速数センチで隕石が突っ込んだことになる。そのとき数百メートルもの巨大津波が発生し、さらに溶けた岩石やガスによって地球の環境が大きく変わったらしい。こんな小さな隕石で恐竜だけでなく、生物種の実に60-70%が絶滅してしまったのだ。地球は実にデリケートなのだ。
さらにこんな話もある。1908年シベリアのツングースに直径100mの彗星が落ちてきた。ミニチュア地球ではわずか0.1mmのルーペでやっと見えるくらいの塵だ。猛スピードで大気に突っ込んできた彗星(氷や岩石の塊)は、急激に熱せられ大爆発した。こんなに小さな物体で、100km四方(ミニチュアでは10cm四方)の森林がなぎ倒されたという。さて、現実の世界では標高が高くなるほど空気がうすくなってくる。人間が酸素ボンベ無しで普通に呼吸して生活できるのは、まぁなんぼなんでも標高5000mくらいだろう(私は
標高4200mのマウナケア山で高山病になった)。標高5000mといえば、直径12.75mのミニチュア地球では厚さわずか5mmだ。我々はそんな薄~い大気のシートの中で暮らしているのだ。
■もしも、太陽系が100万分の1に縮んで、東京スカイツリーの横に並んだら…
たとえば、東京スカイツリー(634m)の横に100万分の1に縮小した太陽系の惑星が縦に並べたらどうなるだろう…? さらに夜はライトアップされて、東京は幻想的な雰囲気に包まれる。直径143mのミニチュア木星は、あまりの大きさに見る人を圧倒する。100万分の1に縮小してもこんなにデカイのか! 直径は1391m。東京スカイツリーの実際の高さの2.2倍もある。デカイ。さすがは太陽。よくみてほしい。地球は下の方に火星や金星と一緒に縦に並んでいる。
ちなみに本物の木星は、ちょうど今頃(2015年5月現在)日が暮れると空の真上から西の辺りにひときわ明るく黄色く光っているのですぐにわかる。小さな天体望遠鏡でも縞模様や4つの衛星(ガリレオ衛星)が見えてけっこう楽しめる。倍率は100倍以上がいい。望遠鏡をお持ちでない方は、低倍率の双眼鏡で見ても丸いボールのような姿を見ることができる。
■銀河鉄道で行くミニチュア太陽系の旅
30年前の人気アニメ「銀河鉄道999」が、もし本当に走っていたら、そしてこの100万分の1ミニチュア太陽系を走ったら、どんな旅になるのだろうか。
「999号」の速度は・・・普通の蒸気機関車だとおそらく時速100kmくらいだろう。時速100kmといえば、ミニチュア太陽系では時速10cmだ。つまり1日に2.4mという“のろのろ運転”で宇宙空間を進む。最初の停車駅は月。384m向こうにある直径3.5mほどの球体だ。片道160日もかかる。月は地球から一番近い天体なのだが、それでもこんなに時間がかかるのだ。しかもせっかく月に着いても空気が無いので宇宙服無しで月面を散歩することはできない。
ここから先の旅はあまりお勧めできない。わかりやすくするために100万分の1ミニチュア太陽系に日本地図を重ね合わせた。地球を東京の位置にもってきた。身近に思える太陽だが150kmも離れている。さらに逆方向の木星の軌道までは、東京から広島くらいの距離がある。その手前の火星の軌道でも、76.8kmも離れている。「999号」は1日で2.4mしか進めないので、火星へ行くのに最短距離を走行しても3万1976日、つまり88年もかかるのだ。脅かすようだが、その間の宇宙空間には、実に何も無い。ただひたすら列車に乗っているだけ。まるで無期懲役だ。
さて、これから先の旅はさらにはてしなく長い。もう一度上の図を見てみよう。火星から木星の軌道まで575km。箱根-広島間と同じくらいの距離だ。「999号」の速度では、23万9583日かかる。つまり656年!
そして、西暦2759年「999号」は、ついに木星に到着。木星から先、土星、天王星、海王星はガス惑星といって水素やヘリウムでできている。どれも巨大だ(東京スカイツリーの図を参照)。
木星観光の目玉はなんといっても衛星イオだろう。イオでは惑星探査機ボイジャーによって地球以外で初めて火山活動が確認された。地球のような溶岩とともに硫黄の溶岩も噴出し、表面は黄色く彩られている。今でも複数の火山が活発に活動していて地表面は常に変化している。その火山活動のエネルギーの源は潮汐力だ。木星の周りを楕円軌道を描いてまわるイオは、木星の重力に引っ張られてゴムボールのように形を変形させ、その摩擦によって熱を発生させているのだ。
さて木星から先の旅はどうなるのだろうか。下の図を見てみよう。
東京にある地球から見ると、直径120mの土星が奄美大島付近に浮かんでいる。天王星は香港、海王星はタイの首都バンコクのあたりにある直径50mの球体。2015年7月14日に初めて探査機が訪れる冥王星は、バンコクのさらに500km向こうの海上にある2.4mの小さな球体だ。100万分の1に縮小したミニチュアにもかかわらず、地球から冥王星の軌道までは4,768kmもある。宇宙がいかに広いか実感できただろうか。それにしてもよくこんなものを見つけたものだ。「999号」は地球を出発して198万6,666日目、つまり5442年後の西暦7457年に冥王星に到着する。鉄郎とメーテルから数えて実に272世代後の子孫が車窓からこの小さな準惑星を眺めることになるだろう。時速100km(ミニチュアでは時速10cm)で走ってもこんなに年月がかかるのだ。そう、太陽系は果てしなく広いのだ!
(文=山本睦徳)
■山本睦徳(やまもと・むつのり)
ドキュメンタリー作家。地球科学のドキュメンタリー映画製作、記事を執筆。面白くて楽しく読める文章で読者を地球科学の世界へ誘う。<http://www.earthscience.jp>
参考になる本:
『再現!巨大隕石衝突 6500万年前の謎を解く』『惑星・太陽の大発見 46億年目の真実』
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