鬼才テリー・ギリアムが描くディストピア的近未来『ゼロの未来』はやはり難解!?
――ホラー映画マニアによるレビューシリーズ
■今回の映画『ゼロの未来』(公開中)
怖さ度 ★
笑える度 ★
オシャレ度 ★★★★
マニア歓喜度 ★★★★★
びっくり度 ★★★
■あらすじ
コンピューターに支配された近未来――荒廃した教会に1人で住む孤独な天才コンピューター技師コーエン(クリストフ・ヴァルツ)は、人生の意味を示す電話が鳴るのを待ちながら、謎の数式「ゼロの定理」の解明を義務付けられていた。ある日、パーティーの場に連れ出されたコーエンは、そこでキュートな女性ベインスリー(メラニー・ティエリー)と知り合う。こうして彼女の魅力を感じたとき、コーエンの人生は大きく変わっていく。やがて社長の息子でコンピューター技師でもある若き天才児ボブ(ルーカス・ヘッジズ)との交流と、ベインスリーとの恋を通じてコーエンは生きる意味を知っていくが……。
■秋葉原をイメージして作られた近未来
本作のオープニングで描かれた近未来の路上シーンには、日本の文化を思わせるものが数多く登場するが、実はギリアム監督が初来日時に訪れた秋葉原をイメージして描かれており、「秋葉原駅の改札口を出たときの騒音やディスプレイ、あふれかえるテレビや洗濯機の家電の狭間で踊るコスプレやパフォーマー、その周辺でうごめくヲタク……さまざまな自己主張が目に飛び込んできたとき、生まれて初めてカルチャーショックを受けた」と語っているのだ。
■マニアはうれしい、難解映画
『バロン』(89年日本公開)や『Dr.パルナサスの鏡』(10年日本公開)などのSFファンタジーを得意とし、その才気溢れる映像美がマニア層から熱狂的な支持を受けているイギリスの鬼才・ギリアム監督。特に『未来世紀ブラジル』(86年日本公開)と『12モンキーズ』(96年日本公開)が有名で人気が高いが、本作もこの流れを汲むディストピア的近未来を、独創的な映像美と観念的な世界観で描いている。ゆえに「単純でわかりやすい」とか、「痛快無比でスカッとする」類の映画ではない。どちらかといえば、鑑賞者が映画と格闘しなければならないパターン。監督が本作で伝えたい意図を理解できるかどうかの勝負だ。もちろん、勝利した時の達成感は言葉ではあらわせない。また、マット・デイモンがカメオ出演しているのにも注目だ。映画ファン、そしてSFファンなら楽しめる、少々上級者向けの映画だといえるだろう。
(文=深沢光太郎)
■劇場公開日
新宿武蔵野館ほか、全国公開中
■配給
ショウゲート
■出演クリストフ・ワルツ コーエン・レス デビッド・シューリスジョビー メラニー・ティエリーベインズリー
■公式サイト:http://www.zeronomirai.com/
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