「ネズミはもういい、次はサル」…迫る霊長類の頭部移植手術=中国

 異なる人物の胴体と頭部を、手術によってつなぎ合わせる「頭部移植手術」。人造人間やホラー映画を連想させるこの技術だが、以前トカナでも実現化させようとしているイタリア人博士の計画についてお伝えした――。そして、また今度は中国の医師によるある計画が取り沙汰されているようだ。


■1,000匹以上ものマウス実験を終えた医師が目指す次の狙いはサル?

「ネズミはもういい、次はサル」…迫る霊長類の頭部移植手術=中国の画像1実験に使われたマウス 画像は「YouTube」より

 中国の外科医、シャオピン・レン(Xiaoping Ren)氏 は、2013年からこれまでにマウスを用いた頭部移植手術を数多く行っており、その数はおよそ1,000匹以上にも及んだ。彼の手術後、マウスは最長10日間ほど生きたという。これらの経歴を持って、移植手術において自らを世界有数の権威だと考えているそうだ。

 彼が公開した術後のマウスたちの写真からは、体の色と頭部の色が違い。わかりやすく異様な姿をしていることが見てとれる。

 レン氏いわく、次は食物連鎖の順をたどって霊長類であるサルで術式を試したいと語り、成功の可能性は低いにも関わらず「(頭部移植したのちに)少しの間だけでも呼吸し、生きた」ことを証明したいのだそうだ。

 彼の考えに対し、批評家やニューヨークで医療倫理について教鞭を取るアーサー・カプラン教授などは「全体的なアイデアがバカげている。とんでもない考えだ」などと提案を非難。より人間に近い存在である霊長類が、それも「少しでも生きたことを証明するために」という医療本来の目的を逸れ、まるで自らの名誉獲得のためとも捉えられかねないような動機で手術に利用されようとしているのに憤慨している。

■「頭部移植」を待ち望む人がいる…

 しかし、一見残酷なだけに見えるこの「頭部移植」の技術を本当に必要にとしている人がいるのも事実だ。たとえば、先にトカナでお伝えしたロシアのコンピュータ科学者ヴァレリー・スピリノドフ氏の件だ。

 現在30歳である彼は、生まれながらにして重篤な遺伝性の消耗性疾患を患っている。年々悪化する彼の病は、患者の多くが20歳前後で死亡しており、彼自身いまも死の恐怖におびえながら生きている。

 どんな大きなリスクがあろうとも、いまより長く生きるために移植手術を受ける意欲を見せるスピリノドフ氏と、彼にその手術を提案したイタリアの医学博士セルジオ・カナヴェロ氏との間では、資金や人材など準備が進行中だ。すべての準備ができ次第、早ければ来年中には手術が行われる予定なのだという。

 倫理観が問われるこの「頭部移植手術」――。霊長類に試すことがタブー視されているかのようにみえる一方で、マウスなら1,000匹でも認められるのか? 不治の病に対してならば本人が良ければいいのか? など多方向からの懸念が抱かれるであろう。

 IPS細胞やクローン技術など、一昔前なら考えもできなかった技術が現実的に可能であるいま、頭と体が別の人間で構成された、物語やマンガさながらの「人造人間」が生まれる日もそう遠くないのかもしれない。
(文=ODACHIN)

参考:「Daily Mail」ほか

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