実際にあった米ソの超能力競争がアツい!! ~伝説の超能力者・ジューナ(前編)~

実際にあった米ソの超能力競争がアツい!! ~伝説の超能力者・ジューナ(前編)~の画像1画像は「Radio Free Europe / Radio Liberty」より引用

 今月8日、旧ソ連を代表する伝説の超能力者、「ジューナ」ことエフゲニア・ダヴィタシュビリ氏が65歳で死去した。そこで今回は、前編と後編に分けて、ロシアの近現代史における超能力者の位置づけを振り返るとともに、ジューナの果たした役割について再確認してみよう。


■ロシアにおける超能力研究、その黎明期

 ロシアにおける超能力研究については、未だ謎めいた部分が多く残っている。ただ、他の欧米諸国と同様、その端緒は心霊研究に求められるようだ。帝政ロシアでは、ロマノフ王家の宮廷顧問官を務めていたアレクサンドル・アクサコフが心霊研究の草分けとして知られており、1877年には、ヘンリー・スレイドやユーサピア・パラディーノといった有名な物理霊媒師をロシアに招いて公開実験を行った。しかし、当時ロシア科学アカデミーの重鎮であったメンデレーエフなどが懐疑的な態度を表明したこともあり、ロシアにおける心霊・超能力研究の発展は、しばらく待たなければならなかった。

 第一次世界大戦が終結すると、以前からテレパシーの研究を行っていた心理学者ウラジミール・ベーフテレフが、レニングラード大学国立脳髄研究所所長に就任、超能力の本格的な研究を開始した。この研究はレオニード・ヴァシリエフらに引き継がれたが、第二次世界大戦により中断してしまう。また、第二次世界大戦後のスターリン時代、超心理学も含めたオカルト関係の事象は、かなり抑圧された状態であった。こうした事情がようやく変化したのは、1960年代のことだ。


■旧ソ連を超能力研究へと走らせた、1冊の本

 この年にフランスで出版された1冊の書物が、旧ソ連のみならず東欧諸国首脳に大きな衝撃を与えたのだ。それこそが、ルイ・ポーウェルとジャック・ベルジェが著した『魔術師の朝』(邦訳は『神秘学大全』)である。

実際にあった米ソの超能力競争がアツい!! ~伝説の超能力者・ジューナ(前編)~の画像2画像は『神秘学大全』(学習研究社)より

 この書物には、ナチスのオカルト的側面や伝説の錬金術師フルカネルリの予言、古代に地球を訪れた宇宙人の痕跡など、後のオカルト界に大きな影響を残す内容がいくつも記されている。しかし、共産主義諸国が何よりも驚愕したのは、「アメリカ政府が原子力潜水艦ノーチラス号を用いて、大西洋の海底とアメリカ本土の間で長距離テレパシー実験を行なった」という記述だった。

 東西冷戦の時代、両陣営は核・潜水艦・航空機など軍事的なあらゆる側面で互いに張り合っていた。ところが『魔術師の朝』によると、アメリカは軍事的な通信手段として、テレパシーをほぼ実用化しているというのだ。これに対し、ソ連政府は「自分たちはこの方面で完全に遅れをとっているのではないか」と疑心暗鬼に陥ったのだ。

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