マフィアに殺されかけた康芳夫が語る、猪木VSアリ戦ほか伝説の対決企画がヤバすぎる!
【国際暗黒プロデューサー康芳夫 インタビューシリーズ 第2回】
■マフィアに殺されかけた猪木アリ戦
現在のサブカル界隈で最も知られている康芳夫の仕事といえば、1976年に両国国技館で行なわれた世紀の一戦(凡戦とも言われたが)『アントニオ猪木vsモハメド・アリ戦』だろう。
「僕は最初にアリのボクシングの試合(のプロデュース)をやったんですよ。日本武道館でね(1972年・対マック・フォスター戦)。それにヒントを得て猪木くんはアリ猪木戦をやりたいと言い出したんです。まあアリのマネージャーも弁護士も同じですから、いろいろ仲介してあげました」
康は、当時の世界のトップをキャスティングするためにはなんでもしたという。
――当時、まずイスラム教徒に入信したんですよね?
「入信しました、それは事実です」
――そのためだけに入信したんですよね。
「簡単に言えばそうです。もちろん、非難されましたよ。いまムスリムは別の形で問題になってるでしょ? イスラム国ですか。まあでもそんな過激なものじゃないですけどね、元々ムスリムに興味があったのは事実です。今は大きな教会になってますけど、当時代々木にあった小さな教会で入信したんです。アリが来た時にはもちろんそこに連れていきましたよ。マネージャーがムスリムでしたからね、そこに近付くために……オーバーに言えば偽装入信ですよ」
――オーバーじゃなくて偽装入信ですよ(笑)。
「約50年前だったから、FBIが一掃する前で、まだマフィアが力を持っている時だったんです。アリは人気者ですから、テキサスとか、LAとか、サウスカロライナとかでマフィアが興行権を奪い合ってたんです。それを僕がぶんどろうとしたものですから、その場合お金を払ってカタが付く問題もあれば、そうでもない問題もある。その時はホントに命を狙われましたね」
――アメリカのマフィアというと『ゴッドファーザー』の世界のようですね。
「そうそう。でも奴らも有無をいわせないところがあるからね。いろんな人から情報を得たりして、対策を立てましたよ。ホテルの部屋を必ず二つ借りたりね。別の奴を泊めておいた部屋で夜中に変な音がしたり、そんなことはいっぱいある。それはそれは身の休まらない時代でしたね。いざ開催になったら日本側のボクシングジムもね、今でも裏は全部『ナナメ』なんだけど」
――(笑)。
「そいつらが僕に興行をやらせないってなったんですよ。ひとつの理由はね、僕がプロモーターライセンスを持ってないってことだったんだけど、結局は協栄ジムの金平(正紀)くんとやりましたけどね、日本のヤクザはマフィアと比べたらオモチャみたいなものでしたね。それを怖がってたらこの商売はできない」
――日米のマフィアで、どういう違いがあったんですか?
「日本のマフィアには情けとかありますけどね、向こうは面倒臭かったらすぐ殺しますから」
――仕事柄、やはり身の危険を感じたことは多いですか?
「それはねえ、もうしょっちゅうありますよ。その覚悟してないとこの仕事はやっていけません。でも“俺を殺したって一文にもなりませんよ”っていうやり方でやってるからね。こっちはそういう泣かせ文句知ってるから」
■ウガンダの“人喰い大統領”アミンと契約
世界一のボクサー、宗教、裏社会勢力、利用できるものはなんでも駆使したという康の企画が世間一般の範疇にとどまらないのは当然だろう。アリのボクシング戦に端を発した康芳夫の一連の格闘技路線には、あまりに現実社会から飛躍しすぎて未遂に終わったものも多い。
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