科学者「この世はニセモノかもしれない」我々は完全にフェイクな世界で生きているのかも?
■物理法則は何者かによってプログラムされたシミュレーション!?
番組にはボストロム教授以外にもさまざまな分野の識者が登場してこの問題についての見解を述べている。
SF作家のデイヴィッド・ブリン氏は、うたた寝中の夢の中で50年の生活を体験したという中国の故事「邯鄲の夢(邯鄲の枕)」を引き合いに出し、2050年の社会では人々はコンピュータ・シミュレーション上で生活しているだろうと語っている。
実業家でフューチャリストのレイ・カーツワイル氏は話の中で「宇宙はコンピュータです」と述べ、自分自身もひとつの情報のパターンであると定義。「情報こそが究極の現実なのです」と結んでいる。
では、本当にこの世がコンピュータ・シミュレーションなのだとすれば、それを証明する糸口はあるのか? 物理学者のポール・デイビス氏は多元宇宙論(Multiverse)を駆使してこの謎に挑み、もし宇宙がシミュレーションであるなら物理法則もシミュレーションであるという認識に立脚し、現在の物理学の様々な科学的矛盾は、物理法則が何者かによってプログラムされたシミュレーションであることの証明になると示唆している。
「(この宇宙の)いくつかの文明は完全にフェイクな世界を作り上げることができる技術を持っている」(ポール・デイビス氏)
やはりここでも、人智を遥かに越えた知的文明の存在が指摘されているのだが、これは人間にとっての“神”なのだろうか?
■“神”と考えていた存在はソフトウェアの“作者”だった!?
では「シミュレーション仮説」は“神”の存在や一神教に関係するものなのだろうか?
「『シミュレーション仮説』は一神教や無神論の代わりになるものではありません」と前出のニック・ボストロム教授は語る。「むしろ、すべてを創造したというキリスト教的な「創造主論(creation hypothesis)」を弱めることになるだろう、なぜなら、伝統的な神がシミュレーションの“作者”に取って代わるから」だという。
このシミュレーションをつくった作者、いわば“超越的存在”はもちろん高度な知能と技術を携えているが、決して無限の力を求めているわけではないという。彼らはシミュレーションを操作することによって、我々の世界に干渉し、場合によっては好ましいようにすべてを変えることができる能力を持っているらしい。
文明論から宗教論にまで発展するこの「シミュレーション仮説」だが、考え出すとなかなかキリがない案件のようだ。しかし我々人間が作ったものではない自然環境は、好むと好まざるとに関わらずに用意された“舞台”であるし、そこで我々人類がいろんな工夫を凝らしながら今日まで生きてきた過程が、まさにシミュレーションゲームそのものかもしれない。問題はそこに“管理責任者”がいるのかいないのか、ということになるのだが……。眠れない真夏の夜に考えてみれは熟睡できるかも!?
(文=仲田しんじ)
参考:「Daily Mail」、「Space.com」ほか
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