あまりに前衛的すぎた100年前の「手作りシンセサイザー」!! 旧ソ連の驚異の科学力!!
■Variophoneの完成。驚愕、それはまるでファミコンの効果音
1932年にエンジニアのEvgeny Sholpoは、作曲家のRimsky Korsakovとコラボして厚紙のディスクをカットし、35ミリフィルムに直接波形を刻むことによってシンセサウンドを生み出す「Variophone」という装置を完成させた。1935年に撮影されたこの映像には、Evgeny Sholpoが実際に使用している様子が映像に記録されている。
「Variophone」の構造図を見ると結構複雑な作りをしている。用いた紙のディスクが作る波形は非常に独特な幾何学模様で、電子トラックを見ているだけでアート作品のような美しさがある。「Variophone」の仕組みを簡単に説明すると、映画フィルムの回転に合わせ紙で作ったディスクを同期させ、アンプによって音を増幅させスピーカーより出すというもので、フィルムに様々な波形を多重記録することにより実に複雑な音を出すことができるというとのものだ。
■この音には度肝を抜く、より高い完成度を求め
Nikolai Voinovは自身の研究によって「Variophone」で用いられた技術を更に高め、磁気テープを用いることによってピアノの半音まで再現することに成功する。まさに「Variophone」方式によるシンセサイザーの最盛期である。1936年、最先端機器の雑誌の中で「スケッチ・サウンド」としてNikolai Voinovの研究が紹介されている。彼の研究成果は自身のショートアニメーション作品「Rachmaninov Prelude (1932)」や「The Dance of the Crow (1933) 」などにて見ることができる。
それらは以下の動画によって見ることができるが、そのクオリティーの高さに我が耳を疑わずにはいられないだろう。
しかし、1937年ハモンド社より163本の真空管、1000個以上の特注コンデンサ等を使用した画期的なシンセサイザー「Novachord」が発売されると、再現域の圧倒的な差より「Variophone」は急速に影を薄めていくことになる。段々と戦争の色が濃くなり、1941年レニングラード侵攻の末、「Variophone」は敵の爆撃によって破壊されてしまう。第二次世界大戦後Evgeny Sholpoはレニングラードにて新しい研究所の所長になるも、長く病を患い1951年遂に第四世代となる最終型「Variophone」の完成を目前にしてこの世を去り、それとともに研究所は閉鎖された。
彼らの研究はシンセサイザーの歴史から見れば異端だったかもしれない。しかし今聞いても色あせないこの音を作り出した技術者たちの苦労は形は見えねども、決して無駄なものではなかったはずだ。
(アナザー茂)
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2024.10.02 20:00心霊あまりに前衛的すぎた100年前の「手作りシンセサイザー」!! 旧ソ連の驚異の科学力!!のページです。アナザー茂、旧ソ連、シンセサイザーなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで