最高に悪そうで、最高に正義 ― インドネシア貧困層から圧倒的支持を受けるPUNKバンド「MARJINAL」の革命

最高に悪そうで、最高に正義 ― インドネシア貧困層から圧倒的支持を受けるPUNKバンド「MARJINAL」の革命の画像82014年5月、マージナルは初日本ツアーを果たした。中野ムーンステップではライブ前に版画のワークショップを行い、多くの日本の仲間たちが参加した

■死んでもいいから闘争する

 この映画を観ることにより感じるものをみんなで共有できるのならば、マイクが言うように全ての人が平等に自由を選択できる世の中になるだろう。

 彼等が来日した際に話していても様々なところで彼等の人間性があふれていて、彼等と共有している時間は、一生忘れることのできない素晴らしいひとときだ。

 すばらしく心が広く、すべての事柄をそこにいる人間たちとシェアし、他者をリスペクトし続ける精神に感動する。

 そしてステージでも彼等の気持ちは痛いほど観客に伝わり、自然と身体が動き拳を振り上げ合唱してしまう。ライブを観て感動で涙が出て来ることを体験できるというのは、生きていて良かったと本当に心から思える瞬間だ。

 日本ではパンクをファッションとして捉えている人間が多い。

 しかし日本でもパンクをファッションとしてではなく、社会に対する不満や憤りを音楽や生き方で表す人間も少なくない。

 そうした人間たちは、一般的には受け入れられないようなファッションに身を包み、モヒカンやスパイキーヘアー(全ての髪の毛を立てているPUNK独特の髪型)にして不満や憤りを表現する。

 モヒカンは、インディアンの戦士の髪型で、「死んでもいいから闘争する」という意味を持っている。スパイキーヘアーは、「怒髪天をつく」の意味と同じく、怒りで髪の毛が逆立っているのを表現している

 そういった意味でモヒカンやスパイキーにしている人間も存在するので、これを機に知っておくといいだろう。

 彼等は真剣に生き様としてその髪型にしているので、知らない人間が面白半分に「触らせて」などと言うのは失礼に当たることを理解してほしい。

 そして、ファッションとして捉えている人間たちも、音楽ジャンルのひとつとして捉えている人間でも、パンクというものを知っているならば、是非MARJINALを体験することを薦める。

 残念ながら映画の次回上映は未定だが、MARJINALのCDとMAJIKのCDは発売されているので、是非聞いて欲しい。メロディアスでハードなサウンドは人の心を鷲掴みにし、そのサウンドに乗せられた歌詞は、前述した作品以外でも感動することは間違いないだろう。

 MARJINALの歌を聞き、映画を観て、ライブを体験すれば自分自身の答えがきっと見つかるはずだ。

 彼等の持つ魂に触れたときに、必ずその人間の心に変化が起こるだろう。それがより多くに人間に伝わって行けば、世の中は自然に変わるのではないだろうか。人はそれぞれ皆違う。その違いを祝おう。

BHINEKA TUNGGAI.IKA 「多様である それでも一つ」

僕らは自由な子どもの心を持っているから
全ての民族の自由な精神を
制限がない 国境がない 差別がない
僕らは自由な子どもの心を持っているから

黒 白 茶 黄 グレーの猿
あなたが誰であれ
この自然の目にはみんな同じに映っている
多様である それでも一つ
異なってはいるけど僕らは一つ
異なっている その通り それこそが僕たちなんだ

友よ 確信しよう
一人では決して前に進めないことを
一歩ずつ目標に向かって
敵意なく この違いを祝おう
争うことなく 友愛を味わおう

僕らは自由な子どもだから
全ての民族の子どもだから
国境がなく 差別がない
僕らはみんな自由なのだから

僕は自由なスピリットだ
何も所有してないが豊かな心は持っている
この世は平等で公平に
みんなに属するものだから

僕は太陽を持ち運んでいる
そしてそれをみんなで分ける
パンを分けるのと同じように
みんながもらえるんだ ヘイ!
みんなで一緒にハッピーになろう

あなたがどんな色で 誰であっても
この自然の目にはみんな同じに映っている

MAJIK – MARJINAL AKUSTIK アルバム【FREE SPIRITS OF ALL NATION】より

MAJIK – MARJINAL AKUSTIK
【FREE SPIRITS OF ALL NATION】

監督:野田昌志

■MARJINAL、MAJIK作品 『microAction』

MARJINAL
【SEJAJAR】
※タイトル名:SEJAJARとは、インドネシア語で、平等な、イコールであること、という意味があり、「人間、動物、木、地球など全てのものがSEJAJAR」であり、「マージナルは、全ての曲でこのことを歌っている」
MA/CD-7 2000円(+tax)
商品ページ:http://microaction.jp/onlineshop/000217/

MAJIK – MARJINAL AKUSTIK
【FREE SPIRITS OF ALL NATION】
MA/CD-10 2500円(+tax)
商品ページ:http://microaction.jp/onlineshop/000366/

■取材・文=ISHIYA
JAPANESE HARD CORE PUNKバンド FORWARDのボーカルでありフリーライター。ライター
REAL SOUND」「INDIES INFO 連載コラム」「PUNK ROCK ISSUE BOLLOCKS 連載コラム」「SUUMOジャーナル」「土木建築系総合カルチャーマガジン「BLUES’ MAGAZINE」」で執筆中。

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

今月の写真

写真アーカイブ

  • 死ぬまでに行きたい「世界の廃墟」10選! 世界的廃墟写真家ボブ・ティッセンが捉えた闇の絶景!2023.02
  • 学歴なし・職歴なし・国民保険も税金も払ったことない偽名の男が写真家として才能爆発!「扇情カメラマン」酒井よし彦インタビュー2021.11
  • 密!密!! 密!!! 混沌と猥雑の圧倒的エネルギー! 人間が発する強烈な光と汗、命のスパーク…“男の裸祭り”の神髄を捉えた写真家・甲斐啓二郎インタビュー2021.07
  • 【展示中】カップルを真空パックし、建物もバキュームした写真家フォトグラファー・ハルの新作がヤバい! 「ドラム式洗濯機」に人間を凝縮させて“洗浄”!2021.05
  • 見惚れるほど美しい“内臓の共振写真”…写真家・石川竜一、5年ぶりの写真集『いのちのうちがわ』が刺さりまくる!(インタビュー)2021.03
  • SNSで排除されたアート写真が大集結『私たちは消された展』が超最高!!「死やエロを遠ざける理由はない」主催者の“扇情カメラマン”酒井よし彦が咆える!2021.02
  • 「世界一不気味なネコの絵」6点がヤバい! 猫を描く天才画家マーゴット・バードインタビュー2021.01
  • 現在、過去、未来、暗闇の桜並木…コロナで一転した世界を捉えた岩根愛写真集『A NEW RIVER』が美しすぎて泣ける!インタビュー2020.12
  • 日本初の「コロナ写真集」がヤバすぎる! 誰もが朧気にしか見えていなかった「コロナ禍の我々」を直視する写真集『東京、コロナ禍。』初沢亜利インタビュー2020.09
  • 日本の週刊誌を模した「激烈にヤバイ写真」を撮る英国人を発見! ジョシュア・ウィルクス、インタビュー!2020.07
  • 【写真多数】「世界のジプシー音楽」を求めて…写真家・石田昌隆、激動する世界と音楽を追った30年間の旅の記録インタビュー2020.06
  • オールヌード写真集『羊水にみる光』発売記念対談! 写真家・笠井爾示×モデル・兎丸愛美2020.03
  • 死ぬまでに絶対行きたい「世界のヤバイ廃墟」10選! 精神病院、ラブホ…世界的廃墟写真家ボブ・ティッセンが捉えた闇の絶景!2020.02
  • ホームレスとその「庵」を10年間撮り続けた写真家・野口健吾インタビュー! 西成、池袋、茨城…出会った野宿者は600人、厳しさ増す現状!2020.01
  • 政治家の“本当の素顔”を撮ってしまった写真家、林育良インタビュー!「神のお告げで写真家に…」これが現役の台湾総統首席カメラマンだ!2019.10
  • 現役台湾総統・蔡英文の専属カメラマン、林育良が本当にスゴすぎる! 日本では不可能な”国家元首のアート写真”で、政治の概念を解体する!2019.09
  • 超超最高のインド写真! 1億人が集結する世界最大の祭りクンブメーラの写真集『バガボンド』がヤバすぎて病むレベル!名越啓介インタビュー2019.08
  • 元家出少年が撮影した「ドープな大田区」がゴリゴリに切な過ぎる! 社会からこぼれ落ちそうな人間の儚さ…写真家・水島貴大『Long Hug Town』インタビュー2019.07
  • 木村伊兵衛写真賞受賞! ハワイ、福島、災害、そして再生… 絶望の時代にあって希望しかない写真集『KIPUKA』作者、岩根愛インタビュー2019.03
  • 銃口向けられ、ギャングに突撃され…! 最悪のスラム街を10年間撮り続けた「クレイジージャーニー」写真家・伊藤大輔インタビュー2019.02
  • ヨシダナギに影響を与えた写真家ジミー・ネルソンが超凄い! 「絶滅危機の少数民族」を30年間撮り続け…!2019.01
  • 世界最後の秘境で生きる「絶滅危機の少数民族」たちを30年間撮り続けた写真家 ―「瞬く間に彼らは去ってしまう」 ジミー・ネルソン2018.12
  • 「未知なる存在」を感知させる写真家・李岳凌インタビュー! 最高強度にエモ・ピュア・ディープな台湾を見よ!2018.09
  • 北朝鮮は5年間でこんなにも変わった ― 親日的な政府関係者、熱々カップル、 高層ビル群…  報じられない真実を見た写真家・初沢亜利インタビュー!2018.08
  • 即身仏、イタコ、修験道、婆バクハツ、東京の闇…神レベルの写真展「内藤正敏 異界出現」がマジやばい!2018.07
  • 【展示情報】澁澤龍彦没後30年! エロティシズム、魔術、両性具有…異端文化のカリスマの創作現場を公開『澁澤龍彦ドラコニアの地平』展が強すぎる!2017.12
  • 大北朝鮮帝国展「切断芸術」が首領様をぶった切る! 「1000年残るモニュメント」「芸術理論なんか糞食らえ!」(現代美術家・生須芳英)2017.11
  • ゾクゾクするほど“圧倒的剥き出し”の沖縄写真集 ー 木村伊兵衛賞作家・石川竜一インタビュー「知ってしまったら逃げられない」2017.10
  • 「らき☆すた神輿」でアニオタたちが流す汗が美しすぎて泣きそうになるレベル! 萌えの聖地・鷲宮神社で愛が爆発する瞬間を激写!2017.09
  • 死刑囚作品展「極限芸術」が放つ圧倒的エネルギー! この筆圧と存在感…死刑制度の是非を超えて“人間”を感じろ!2017.08
  • 世界大注目の「トリックメーク」が脳が歪むレベル!! 自分の身体をキャンバスにする韓国の美人アーティストが妖艶すぎる!2017.07
  • 【シリアルキラー展Ⅱ】人肉ハンバーガー、殺人ピエロ、マンソン…“猟奇殺人鬼”の芸術が鑑賞者に生々しく迫る!前回よりパワーアップ2017.05
  • 【R20】緊縛、絶叫、オネエ、切腹…! 「大人の見世物小屋」サディスティック・サーカスが日本にやって来る!2017.04
  • 恋人たちを“真空パック”する写真家・フォトグラファーハルがヤバすぎる! 息苦しいまでの愛の密着が、海外でも高い評価2017.03
  • 【写真】ベルリン、廃墟の神秘 ― 無人の核シェルター、化学工場…デビッド・リンチも欲しがった東ドイツの遺産2016.12
  • ISダーイッシュと戦うペシュメルガの兵士たちを独占取材! 日本の若き写真家がみた「想像もできない戦場」とは?2016.11
  • 未だ解明されない謎の“縄文人タトゥー”を現代に蘇らせるプロジェクトが美しすぎてカッコイイ!2016.09
  • ダリが認めたエイリアンの絵とは? ― “異形の巨匠”H・R・ギーガーのエロティックでグロテスクな世界2016.07
  • 特別ではない沖縄を撮った“特別な写真集”が揺さぶる沖縄観! 初沢亜利写真集 『沖縄のことを教えてください』2016.06
  • 「青」が気になりすぎた写真家が撮った“青のすべて” ― シュタイナー色彩論にヒントを得た熊谷聖司の写真集が美しすぎる!2016.04
  • 死ぬかもしれない写真集 『CAMP』 ― 写真家・石川竜一×サバイバル登山家・服部文祥対談2016.03
  • クソッタレな世界を疾走する若者たちの日々の欠片 ― 石川竜一写真集『adrenamix』の希望と絶望2016.02
  • 日本の民俗芸能は「美しいんだけど、怖い」 ― 集落に伝わる神々しい恐怖を捉えた写真家・西村裕介インタビュー2016.01
  • 死者と最も近い人々 ― とてつもなく奇妙なスラム街「フィリピンの墓場村」に潜入取材!2015.11
  • 絶対に見ておきたい人工衛星が捉えた地球の風景8! 美しくも奇妙な“奇景”が広がる!2015.10
  • 日常を“異化”する ― BankART「アートと都市を巡る横浜と台北」展で芸術創造の過程を追体験!!2015.08
  • 600万体の骸骨が眠るパリの地下 ― カタコンブ・ド・パリの「人骨の壁」2015.07
  • 6年間都内の非常階段から景色を撮り続けた男 ― “猥雑で美しい” 日本の街並み求めて ~佐藤信太郎インタビュー~2015.06
  • 「水曜日のカンパネラ」のdeepな音楽を聴け!!~新世代のサブカルヒロイン、コムアイにインタビュー~2015.05
  • 絶対に食べてみたい名作小説の食事50選!2015.03
  • 絶対に見ておきたい世界の廃墟5選! 不気味だけど美しいノスタルジックな光景が広がる2015.02
  • 身体改造、性倒錯…性的マイノリティを追ったドキュメンタリー『凍蝶圖鑑』! 鬼才・田中幸夫監督インタビュー 「変態を生き抜く覚悟を決めた彼らは、誰よりも美しい。」2015.01
  • 単なる男尊女卑ではない ― キルギスの誘拐結婚を追った写真家林典子に聞いた「アラ・カチュー」2014.11
  • 水族館の生き物は、本当に生きていると言えるか? 写真家、馬場智行が迫る「魚たちの暗闇」2014.09
  • 土屋太鳳「自然と紙を食べていた」 ― 人が人でなくなる瞬間を演じきった演技派女優『人狼ゲーム』インタビュー2014.08
  • アントワン・ダガタ ― ギャング・娼婦・ジャンキー・戦場…世界に自分を感染させる写真家インタビュー2014.06
  • 【軍艦島】外観維持に158億円!? 立ち入り禁止区域に、秘境写真家・酒井透が迫る!2014.05
  • 【軍艦島】“日本建築史の空白の10年間”に建てられた「65号棟」 立ち入り禁止区域に秘境写真家・酒井透が迫る!2014.04
  • 【軍艦島】立ち入り禁止区域に、秘境写真家・酒井透が迫る!2014.03
  • 日本版バンクシーが渋谷に?震災復興メッセージを含んだ街中の落書き 【タギングアート】2014.02
  • Eccentric Tagging in Tokyo 〜ストリートにインスタレーション空間を生み出すタギングの世界~2014.01