「ジカ熱」の感染拡大の原因はセックスだった? 生物学者が妻との性行為で発見か?

 南米やカリブ海地域で感染拡大が加速するジカ熱の猛威――。ネッタイシマカなどの熱帯地域の蚊がジカウイルス感染の媒介になっていることが確認されているが、「かつて性行為によって人間の間でジカウイルス感染が発生した」と主張する生物学者が現れ、物議を醸している。


■ブライアン・フォイ教授「ジカウイルスがセックスで妻に感染した」

 セックスによってジカ熱が感染する――。この物騒な(!?)主張をしているのは、コロラド大学の生物学者であるブライアン・フォイ教授だ。

 フォイ教授は、2008年に熱帯の蚊を研究するために同僚と共に西アフリカのセネガル南東部の村・バンダファッシを訪れた際に何度も蚊に刺され、何らかのウイルスに感染したのだ。発症は帰国してからはじまり、発熱はもちろん全身倦怠感、手首の膨張、発疹、関節痛、排尿の際の痛み、皮膚疾患などに加え、精液に血が混じることもあったという。これがジカ熱であったのかどうかは正確にはわからないのだが、フォイ教授はジカ熱であると主張している。それというのもこれまでの熱帯地域への渡航でデング熱や黄熱などに対しては一通りの抗体を持っていたからだ。ちなみに、現在でもジカウイルスに対するワクチンは開発されていない。

「ジカ熱」の感染拡大の原因はセックスだった? 生物学者が妻との性行為で発見か?の画像12008年当時のブライアン・フォイ教授(右) 「Science」より

 重症化することなくフォイ教授の症状は治まったのだが、数週間すると今度は教授の妻に同じような症状が現れたのだ。教授が発症したときの症状に加えて、日光に対して極端に皮膚が弱くなったということだ。発症したのは妻だけで、同居する4人の子どもには何の変化もなかった。ということは、フォイ教授の熱帯性の熱病は咳などによる空気感染で転移する可能性は低いことになる。

 そのうちに妻も快方に向かい、この件は忘れ去られようとしていたが、その後1年ほどたってから、フォイ教授にある考えが浮かんだという。それは「あのときのジカウイルスはセックスで妻に感染したのではないか」という“気づき”だ。

 そして生物学者としての興味関心から、この時の出来事を改めて振り返って分析して共著のかたちで研究論文を執筆し、2011年に医学系学術誌「Emerging Infectious Diseases」で発表した。

 これまでは動物間での感染について研究されたことはあったが、熱帯地方の熱病がセックスを通じて人間の間で感染することを示唆した初めての研究となったのである。学会のメインストリームから全面的な賛同を得たわけではないが、今日のジカ熱の流行を受けて改めてフォイ教授の研究が注目されることになったのである。

 そしてフォイ教授に援護弾を放つ研究が昨年発表されている。

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