「ジカ熱」の感染拡大の原因はセックスだった? 生物学者が妻との性行為で発見か?

「ジカ熱」の感染拡大の原因はセックスだった? 生物学者が妻との性行為で発見か?の画像2ヒトスジシマカなどの蚊で感染「Wikipedia」より

 フランスの研究機関「Institut Louis Malarde」のディディエ・マッソ博士らが同じく「Emerging Infectious Diseases」で発表した論文によれば、2013年にジカ熱が流行したフランス領ポリネシアのタヒチにおいて、地元の男性の精液と尿の中にジカウイルスが検出されていたのだ。これによりこの研究においても性行為による感染が指摘されることになった。もちろんさらなる研究が必要とされているが、ジカ熱の“性行為による感染拡大説”はかなり説得力を持ちはじめるはずだ。


■WHO「性行為による感染を認めるにはまだ調査不足」

 一部アメリカ本土や、イギリス、デンマーク、ポルトガルなどヨーロッパでも感染者が確認されて深刻さを増しているジカ熱だが、なんといっても世を騒がせているのが、妊婦が感染すると出生児に小頭症のリスクが高まるという仮説だろう。現時点ではあくまでも仮説なのだが、ブラジル保健省は妊娠中のジカ熱感染と胎児の小頭症との関連性を公式に発表している。事実、ブラジルでは2015年10月から2016年1月中旬までに、国内で4000人近い小頭症児の出産が報告されているのだ。

 このショッキングな発表によって、症状そのものは大したことのないジカ熱が、特に妊婦や妊娠の可能性がある女性にとっては重大なリスクとなったのである。

 世界的な不安と懸念を受けて先ごろ、世界保健機関(WHO)はジカ熱感染拡大に関する声明を発表している。それによれば、ジカ熱は蚊などを媒介にして血液の交わりによって感染するが、そう頻繁に起こるものではないと呼びかけている。また、すでに生まれている乳幼児が、ジカ熱に感染した母親の母乳を飲んで感染する証拠はないという。なぜこのような発表をするのかといえば、ジカ熱の約8割は感染しても発病することがないので、乳幼児の母親が知らずにジカ熱に感染しているケースも考えられるからだ。

 そして先の“セックスによる感染説”だが、WHOは精液からジカウイルスが発見された事例は確認していながらも、性行為による感染を認めるにはまだ調査不足だとしている。今のところWHOは、蚊を媒介とした感染しか公式には認めていないことになるが、血液の交わりによる感染は確かであることから、献血や輸血の血液には入念なチェックが必要となってくるだろう。

 現在最もジカ熱が流行しているブラジルでは、この夏開催のリオデジャネイロ五輪に影響を及ぼすのではないかという懸念すら起こっているようだ。性行為による感染はひとまずWHOによって保留されたかたちになったが、流行地域へやむを得ず足を踏み入れる際には用心するに越したことはないだろう。
(文=仲田しんじ)

参考:「Daily Mail」、「Science」、「NCBI」、「CDC」ほか

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